2025/9/10に韓国のサムスンバイオロジックスが米国の製薬会社から13億ドル(約1916億円)規模の大型の委託生産契約を獲得した
というニュースをみつけました。
サムスンバイオロジックスは、今年の1月にもヨーロッパの製薬会社と14億1011万ドル規模のCMO契約を締結したそうです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d7d6ea72402de5afb7e81fc21a2c7c000570aa85
このニュースからは、サムスンバイオロジックス以外の韓国のバイオ企業も好況な様子がうかがえます。
●ロッテバイオロジックス
2023年に米ニューヨーク州シラキュース市にあるブリストル・マイヤーズスクイプ(BMS)バイオ医薬品生産工場を買収し、2025年に
バイオ企業と製造契約を締結。
●チャバイオテックの米国子会社マティカバイオテクノロジー
米国バイオ企業と委託開発生産の契約を締結。
●セルトリオン
世界的医薬品企業の米国工場買収本契約締結を目前に控えている。
ちょうど前回(9/8)取り上げた米国食品医薬品局(FDA) のFY2024 Annual Reportの中に、過去5年でFDAのサイトカタログに韓国の
サイトの登録が16%増えたという記載があったので、最近の韓国のバイオ医薬品産業の状況が気になり、ChatGPTに聞いてみました。
******************* ChatGPTのまとめた“韓国バイオ医薬品産業の最新動向について” *******************
●概況・政府の戦略
・韓国政府は「バイオ医薬品」を国家戦略産業として位置付ける動きを強めています。2023年から「Bio-Pharmaceutical Development Plan
(バイオ医薬品発展計画)」を立て、2030年までに生産能力(生産規模)を 100兆ウォン(およそ770〜800億ドル)、輸出額を 年500億ドル
に引き上げることを目標としています。
https://en.yna.co.kr/view/AEN20230719004600320
また、国内での原材料・構成部品・設備の自給率(ローカライゼーション率)を現在の約 5%から 2030年までに約 15%まで高める、という
目標も掲げられています。
・「国家バイオ委員会(Presidential Bio Committee/National Bio Committee)」が 2025年1月に発足し、複数省庁を横断してバイオ産業
政策を調整・総括する体制が強化されています。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/ipnews/2025/250123.html
●製造・輸出・市場の動き
・製薬製造業の規模は拡大中で、2024年には製薬生産額が過去最大を記録。₩32.86兆ウォン(約230億ドル)規模に達しており、2023年比
で約 7.3%の増加。
薬・バイオ医薬品の輸出も伸びており、2024年の輸出額は前年比約28%の増加。
https://www.bioworld.com/articles/722712-south-korea-hits-record-23b-pharma-production-2024-exports-up-28?v=preview
・2025年の見通しとして、1~4月で薬品輸出が 36.2 億ドルに達し、前年同期比で約17.7%の増加。年間で薬品輸出は108億ドル前後に
達すると予測されており、過去最高レベルになる可能性が高いと見られています。
特にバイオシミラー(オリジナル医薬品のバイオ類似品)輸出が牽引役。欧州を中心に需要が強まっており、韓国の企業にとって主要な
成長分野となっています。
●研究開発・ライセンシング・イノベーション
・新薬開発・ライセンシング取引が急増中。2025年時点で、ソウルの企業などがイノベーター薬のライセンス契約で累計約78.6億ドルの
取引(YTD)を成立させ、これは 2024年を大きく上回る額です。特に Eli Lilly、GSK 等の大手との契約が複数見られます。
https://www.pharmaceutical-technology.com/analyst-comment/south-korea-emerges-2025-licensing-hub-growth-deals/
・新薬候補(new drug candidates)の発掘数も増えており、過去数年で韓国の企業が開発中の薬候補が1,300を超え、世界全体の候補の
約10%を占めるというデータもあります。
・臨床試験の活動量も上昇傾向。グローバルな臨床試験全体が減少する中で、韓国は臨床試験件数・活動でプラス成長を続けているという
報告があります。
https://www.biospectrumasia.com/analysis/26/25968/the-rise-of-k-biotech.html
●製造キャパシティ・インフラ
・韓国の CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)産業が急速に拡大。Samsung Biologics、Celltrion などが
巨大な生産キャンパスを拡大中で、特に抗体医薬品・バイオ医薬品で後工程(製造・商用出荷)能力を増強しています。
ADC(抗体薬物結合体)など先端バイオ製品の製造にも取り組んでおり、Samsung Biologics などが次世代のバイオ医薬品製造体制を
整備中。
https://www.intralinkgroup.com/en-GB/Latest/Intralink-Insights/February-2025/South-Korea-a-new-global-hub-for-biopharma
●課題・リスク
ただし、成功ばかりではなく、課題やリスクも複数報告されています。
・臨床試験失敗・薬の不承認例
新薬候補の中には、FDA などで承認を得られなかったもの、臨床の後期段階で有効性を証明できなかったものもあります。これらが業界全体
への信頼/投資意欲に影響を与える可能性。
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/50094.html
・コスト・競争力の維持
輸出競争では、欧州・米国・中国など他地域/企業との価格競争が激しく、生産コスト・物流・規制対応コストなどで遅れやすい部分があり、
それをどう抑えるかが課題。政府は税制優遇・補助金・設備投資支援などを強めています。
・規制や承認プロセス
新薬や先端療法(細胞療法/遺伝子治療など)の承認までの期間や制度の予見性・透明性を高める必要が指摘されています。
https://www.intralinkgroup.com/en-GB/Latest/Intralink-Insights/February-2025/South-Korea-a-new-global-hub-for-biopharma
・サステナビリティと人材
高度なバイオ研究・製造に必要な人材育成、また設備投資・インフラ保守、その運営維持などが継続的コストを伴うため、中小企業やスタート
アップにとって資金調達・リスク管理が重要。政府は若い企業の起業支援なども進めています。
●展望
・政府・産業界双方での大きな目標が設定されており、政策・インフラ整備・国際提携などのバックグラウンドは整いつつあるため、今後も
拡大傾向が続く可能性が高い。
・特にバイオシミラー/輸出/ライセンシング案件/先端治療(cell & gene therapy, ADC や TPD 等)の分野で成長余地が大きい。
・また、原材料や設備の内製化強化によりサプライチェーンの安定性を図る動きが続く見込み。
******************************************************************************
ついでに、ChatGPTが、日本と韓国のバイオ医薬品産業を比較したレポートもまとめてくれたので、載せておきます。
******************** ChatGPTのまとめた“日本と韓国のバイオ医薬品産業の比較” ********************
●Executive summary
・韓国は近年、CDMO(受託生産)能力拡大・バイオシミラーやライセンシングでの輸出拡大を中核に急成長しており、グローバルな
生産インフラ(Samsung Biologics、Celltrion 等)を短期間で構築している。
・日本は国内市場規模は依然大きいが、過去数十年でグローバルに占める比率(付加価値シェア)が低下しており、新薬オリジネーションや
輸出で相対的に存在感が弱まっている指摘がある。ただし規制(承認)の迅速化や国内CDMO投資の動きも見られる。
定量面では(COMTRADE/UNデータ等の概算):韓国の医薬品輸出は2024年に約$7.9B(約8 billion USD)と大きく伸びている一方、
日本の医薬品輸出は2024年は約$7.7B程度で、輸出額は日韓で近い水準(ただし産業構造は異なる)。
●比較フレーム(項目別)
1) 政策・国家戦略
・韓国(強み)
バイオ医薬品を国家戦略分野に位置づけ、2030年目標(生産・輸出拡大、ローカライゼーション強化)など積極的な成長戦略を掲げている。
これにより補助金・税制優遇・インフラ支援が動員されやすい。(政策強化の報道や国家コミットメントが継続)。
・日本(弱み→改善の兆し)
かつては巨大な国内市場をベースに成長したが、国家的な投資やイノベーション環境で課題が指摘されてきた(後述のITIF等)。近年は
PMDAの審査改善やCDMOへの投資誘導などで“巻き返し”の動きがある。
2) 製造力(CDMO / GMP能力)
・韓国(強み)
Samsung Biologics は Plant5稼働で約784,000 Lの年容量(世界最大級)を確保、さらに拡張計画がある。Celltrion も医薬品原薬で
数十万L規模の能力を保有し、CDMO事業を強化している。これによりグローバル製薬企業の外部委託を大量に取り込める。
・日本(強み・弱み混在)
日本側にも Fujifilm Diosynth、Ajinomoto Bio-Pharma、CMIC 等のCDMOがあり、細胞治療や小分子〜中分子の受託供給網が整備
されつつある。だが、大型連続生産(大規模バイオ製造)では韓国の拡張の速さにやや後れを取っているとの評価がある(投資規模・新規
大規模プラントの数で差)
3) R&D(新薬オリジネーション)・臨床パイプライン
・韓国(強み)
バイオシミラーや一部の新薬候補でライセンシングが活発化。グローバル大手とのライセンス契約が増え、パイプライン数も増加して
いる(臨床活動も増加)。政府の支援もR&Dへ向かう。
・日本(強み・課題)
日本は基礎研究力・臨床資源は依然強い分野(大学・公的研究機関)を持つが、過去数十年で新薬創出における国際シェアが低下
(ITIF等が指摘)。ただしPMDAの審査短縮やMRCT(多地域共同試験)参加の推進で「薬遅れ」は改善方向にある。
4) 輸出・商流
・韓国
2024年の医薬品輸出は約$7.9B(COMTRADE/UN/TradingEconomics 等)。バイオシミラーとCDMOが輸出の主役。
・日本
2024年の医薬品輸出は約$7.7B 前後(同データベース)で、輸出額自体は韓国と近いが、製品構成(高付加価値の新薬創出→輸出)より
も国内販売比率が高い点で違いがある。
5) 産業構造・エコシステム(スタートアップ、資金、人的資源)
・韓国
資金流入(VC)、大手の戦略的投資、産学連携の加速によりスケールアップしやすい環境を整備中。ただし人材・原材料の一部は
輸入依存。
・日本
基礎研究や人材基盤は強いが、起業・リスク投資・グローバル展開のスピード感で課題が指摘される(ITIFなど)。政府はベンチャー
支援を強化している。
●両者の「強み」と「弱み」まとめ
・韓国 — 強み
1.大規模CDMO能力(Samsung Biologics 等)を短期間で整備し、外販/受託需要を取り込める。
2.バイオシミラーでの成功と迅速な国際展開(欧州・米国への販売網構築)。
3.政府の積極支援(政策目標・補助金)により成長戦略が一体的。
・韓国 — 弱み/リスク
1.依存しがちな輸出先の関税・貿易政策リスク(米国関税等)や地政学リスク。
2.原材料や特殊装置の海外依存や、人材確保の競争。
・日本 — 強み
1.大きな国内市場と強い基礎研究・臨床資源(大学病院等)。
2.規制審査(PMDA)の改善で承認スピードが向上しており、国際共同試験への参加も増加。
3.グローバルに通用する大手製薬(武田、アステラス、塩野義、中外製薬=ロシュ系等)が存在し、基盤は健在。
・日本 — 弱み/リスク
1.長期的に見るとグローバルに占める付加価値シェアが低下しており、新薬オリジネーションでの相対的地位低下が指摘される。
2.大規模なバイオ生産インフラ整備のスピードで韓国に対抗しづらい側面(投資ペースやプラント立ち上げ数で差)。
●実務的インプリケーション(日本企業/政策担当者向けの示唆)
1.戦略的に「差別化領域」を明確化する:日本は基礎研究・高付加価値医薬(先端療法、希少疾患、オリジナル新薬)に注力しつつ、
製造面では専門性の高いニッチな受託や次世代製造(細胞治療、遺伝子治療製造)を伸ばす。
2.CDMO・生産インフラへの迅速な投資:大手・中堅で共同投資や官民ファンドを活用し、大規模プラント・自動化設備の拡充を進める。
3.国際共同開発とMRCTのさらなる推進:臨床開発を国際基準で併走させ、承認ラグを縮める。PMDAとの早期対話を継続する。
4.サプライチェーンの強靭化(原材料の内製化/多元化):韓国同様、ローカライゼーション戦略を検討することで輸出リスクを低減。
●最後に(結論)
・短期的には韓国がCDMOやバイオシミラーで「量」と「グローバル受託」を伸ばしているため、製造・受託の領域で優位に立っている。
・中長期では日本は基礎研究力や大手製薬の資産を活かし、政策・投資の舵取り次第で再びプレゼンスを高める余地がある。だが、
スピード感で韓国に差をつけられないと、製造インフラや輸出面でさらに存在感を落とすリスクがある。
******************************************************************************
<感想>
国を挙げてバイオ医薬品産業を推進している韓国の強さを感じます。
FDAのサイトカタログに韓国のサイトの登録が増えている理由にも納得がいきました。
トランプ関税の影響を抑えるために米国での生産拠点を増やそうとする日本の製薬企業の動きや、武田薬品の米国シフトなども報じられて
いる中、日本国内の製薬産業の今後が気になるところです。
