アメリカの医薬品関税政策に対するアメリカ国内の反応

以前トランプ大統領が、米国内への製薬工場の移転を促して雇用を増やし国家安全保障を強化する目的で医薬品に25%以上の
関税を課すと発表しましたが、現時点ではいつ施行されるか不明です。

この医薬品の関税政策に関し、ブルームバーグ公衆衛生大学院のサイトで興味深い記事をみつけました。
出典:https://publichealth.jhu.edu/2025/tariffs-and-us-drug-prices
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■ 現状と背景
・米国は長年、輸入医薬品に依存しており、輸入額は過去10年で730億ドル(2014年)から2,150億ドル以上(2024年)に急増
している。
・製薬メーカは海外製造への投資を優先し、スイス、アイルランド、ドイツの有利な税制を利用して、事業をヨーロッパに移転した。
主要ブランド薬は欧州(アイルランド・スイスなど)からの輸入が多く、米国内の製造は縮小している。
・イブプロフェン、アスピリン、抗生物質などのジェネリック医薬品はインド・中国に大きく依存している。
■ 関税政策の影響
●ブランド医薬品:
・高価格なため関税による価格上昇リスクが大きい。
・製薬会社は価格転嫁か、自社でコスト吸収かの選択を迫られる。
・価格が上がれば結果として保険料やメディケア負担の増加が懸念される。
●ジェネリック医薬品:
・既に低コストなため、関税の導入により品質悪化・供給不安定(※)のリスクがある。
・特にインド・中国のメーカは、自社でのコスト吸収や工場の米国移転が難しく、手抜き生産になる可能性もある。
※ジェネリック医薬品の供給不足は既に深刻で、2024年Q1には過去最多の323品目が不足している。
■ 関税政策の国家安全保障と製造回帰の実効性
・国家安全保障強化の意図はあるが、すべての薬を国内で製造するのは非現実的である。
・新たな工場建設には時間(※)と投資がかかり、効果は中長期的である。
※WegovyとOzempicを製造しているNovo Nordiskは、2024年にノースカロライナ州に工場を建設する計画を発表
したが、工場は2029年まで稼働しない。
・現状、関税だけでは国内回帰は進みにくく、税制優遇や補助金、人材育成など包括的な政策が必要である。
■ 結論
関税導入は医薬品価格や供給に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、製造の国内回帰という目的を果たすには不十分で、
より現実的で包括的な政策対応が求められている。
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医薬品の価格が上がると、値上げは保険会社に転嫁され、保険会社は保険契約を変更して保険料を引き上げる可能性が
あるというのは非常に興味深い話です。
民間医療保険はもともと高額だと言われていますが、それがさらに引き上げられるとなると、無保険を選ぶ人が増え、保険会社の
業績にも影響があるかもしれません。
相互関税上乗せ適用停止期限が延長されるかどうかもわからない状態で、医薬品の関税の話がどうなっているのかわからなく
なっていますが、引き続き、アメリカの政策には注意していく必要がありそうです。

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