FDA:インドの企業の品質部門に対するデータ・インテグリティを含むCGMP関連の指摘(WL:320-26-34)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) がインドの医薬品製造業者に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/chemspec-chemicals-private-limited-718403-12232025

**************************** Warning Letter 320-26-34 概要***************************
2025年7月28日~8月1日のFDAによるインドの医薬品製造所の査察において、原薬製造に関するCGMP違反がみつかり、2025年12月23日
付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘
貴社の品質部門の、貴社施設で製造される原薬及び中間体がCGMPを遵守していることを保証する責任の不履行
<指摘詳細>
貴社の品質部門は、紙及び電子記録の適切な文書管理を確実にすることを怠った。貴社の品質部門は、貴社の施設の全てのCGMPデータの
適切性と信頼性の監督と管理に関する基本的な責任を果たしていなかった。さらに貴社の品質部門は、原薬のCGMP作業に関わる従業員が
データ・インテグリティの原則を理解し遵守することを保証するのを怠った。例えば:
・貴社の品質部門は製造される原薬の各ロットの製造と管理に関する完全な情報を備えたバッチ製造記録の作成を怠った。貴社は
バッチ製造記録を作成・保持せずに原薬を製造しリリースした。貴社の品質部門はこの逸脱を特定せず、CGMPの不備として我々査察官に
指摘されるまで調査しなかった。
・貴社は、品質部門によるレビュとリリースの記録なしに、原薬XXの複数ロットを販売した。
・貴社の品質部門は、ロット番号を発行するために2つの別々のログブックを持っていて、そのログブックは、同じロット番号に対して2バッチの
製造記録が発行されていることを示していた。さらに、我々は、割り当てられた管理番号がなく、品質部門によって発行されたことを示す文書
もない、製造現場で使用されている2つの原薬のバッチの記録を確認した。
・貴社の品質部門は、不十分なデータ・インテグリティの業務に関与していた。例えば:
 〇貴社の品質部門は、管理された文書を差し替えるプロセスを管理することを怠った。
  貴社の品質部門は、実施されたバッチ製造の記録の多数のページとラボの試験記録で構成されているCGMP文書の原本を差し替え、
原本は文書化された調査をせずに原本を廃棄または破壊した。貴社の品質保証マネジャは原本を保持していないと述べた。我々は、
製造部門で管理された記録を差し替えるために使用されている、品質部門によって発行された証拠のないブランクフォームを見つけた。
 〇貴社の品質部門は、製造オペレータに対して、前のXXによって実施された製造工程のバッチ製造記録内のCGMP情報を遡って記入する
ことを許可していた。貴社の品質部門は、我々の査察中にこのデータ・インテグリティの不備を指摘されるまで調査を開始していなかった。
我々は、前のXX作業を実施していない、または、目撃していない貴社の製造職員XXが、前のXXによって実施された作業に関する原薬の
バッチ製造記録に、成分の重量や量、溶媒、温度等のCGMP情報を、製造事務所にて非同時で記録しているのを確認した。
2025年8月21日付の貴社の回答は、バッチ製造記録における不一致、品質保証のレビュの欠落、管理されていないフォーム、不十分な
文書管理を含む貴社の複数の文書化手順の不備を認めている。貴社は、貴社の品質部門が、製造指図記録原本の作成、レビュ、承認と、
それらの正確性、配布、照合の保証について責任を負うことを認識している。
貴社は、原薬のバッチ製造記録の原本の約半分を回収したと回答した。貴社は、バッチ製造記録の終了のチェックリストと、これらの記録の
紛失を防ぐための必須の照合手順を追加する予定であると回答した。さらに貴社は、バッチの製造記録のレビュとロットのリリースを行う
品質保証職員が不足しているためにロットのリリースを文書化することを怠ったと述べた。
貴社は、CGMP文書の差し替えを、管理上の修正として誤って分類し、これらの文書を差し替えた際に調査を要求する手順を持っていな
かったと述べた。貴社は、全ての差し替えについて、原本の保管と逸脱調査の文書化を義務付けるよう手順を改訂するつもりであると述べた。
貴社の回答は不十分である。貴社は、紛失した全てのバッチ記録に十分に対処し照合していない。貴社は包括的な回顧的評価も試験データ
やリリース文書も提出していない。
貴社は、文書のライフサイクル管理、発行のトレーサビリティ、品質部門のリリース手順を包括的に改善するための計画や手順を提供して
いない。貴社は、過去の非同時の文書化事例の包括的な調査結果を提供していないし、既存のバッチ製造記録の完全性と、品質部門による
リリースを照合していない。
貴社は差し替えられたCGMP文書のページについて、包括的な回顧的レビュを実施していない。貴社は、保管されなかった原本のページの
関連性についていかなる情報も提供していない。貴社は、オリジナルのデータが同時かつ消えないように記録されることを保証するための
適切な改訂手順を提供していない。
完全で正確なロットの製造指図記録は、製造手順が一貫して遵守され再現可能であることを保証するために同時に文書化されなければ
ならない。さらに、不完全な製造記録は、適切に逸脱を調査する能力が失われる。試験条件および結果の完全で正確な記録を同時に
記録・保持できていない場合、データの信頼性が根本的に損なわれる。さらに、信頼できるデータの不足は、品質部門が適用される規格
への遵守を保証する機能を果たす能力を損なう。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の品質部門が効果的に機能するために、権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善の計画
 アセスメントは、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
 〇貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体の品質部門の監督に関する規定
 〇品質部門がロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査及びその他全ての品質部門の職務遂行の監督と承認
・文書化手順の不十分な箇所を特定するための、貴社の製造及びラボの作業全体で使用されている文書化システムの包括的で独立した
アセスメント
 貴社が貴社の作業全体で、帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性、完全性のある記録を保持していることを保証するために、文書化
手順を包括的に改善する詳細な是正処置・予防処置(CAPA)の計画を含めよ。
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性
と完全性を適切に保証していない。CGMPに従ったデータ・インテグリティの手順を制定して遵守するガイダンスについては、以下のFDA
のガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。
我々は、貴社の改善を支援するために、適切なコンサルタントを雇うことを強く勧める。この文書の回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・米国に出荷された、または、この後米国に出荷される医薬品に使用される原薬または中間体に関するデータのレビュ結果を含む
データ記録及び報告における不正確な範囲の包括的な調査
 データ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な説明を含めよ。
・見つかった不備が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
 貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠落の影響を受けた医薬品のリリースにより引き起こされる患者へのリスクの分析
と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
・全体的な是正処置・予防処置の計画の記述を含む、貴社の経営戦略
 詳細な是正処置の計画は、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成する全てのデータの信頼性と
網羅性をいかに保証するつもりかについて記述する必要がある。
●施設での繰り返しの指摘
2025年2月5日付のタイトルのない以前の文書でも、FDAは、同様のCGMPの逸脱を指摘していた。貴社は回答の中でこれらの逸脱に
対する具体的な改善案を提案した。繰り返しの不具合は、原薬の製造に関する経営陣の監督と管理が不十分であることを示している。
●原薬に関する追加のCGMPガイダンス
FDAは、原薬がCGMPに準拠して製造されたかどうかを判断する際に、ICH Q7に記載された期待を考慮する。原薬の製造に関する
CGMPのガイダンスについては、
FDAのガイダンス文書Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients Guidance for Industry
を見よ。
●結論
この文書で挙げた逸脱は、貴社の施設に存在する逸脱の包括的なリストではない。貴社には、逸脱を調査し、原因を判断し、再発や
その他の逸脱の発生を防止する責任がある。
逸脱に対処しない場合は、FDAはXXで製造された製品をFD&C 801(a)(3)、21 U.S.C.381(a)(3)に基づき米国への入荷を拒否する
可能性がある。
***************************************************************************

このウォーニングレターは、FDAが品質部門のデータ・インテグリティの不備に焦点をあてて査察を行い、指摘を行っている点が非常に
興味深いです。
品質部門は、ALCOA(帰属性(Attributable)、判読性(Legible)、同時性(Contemporaneous)、原本性(Original)、正確性(Accurate))と、
完全性(Complete)が保証された記録を作成し保持する重要な責任を負っていることをあらためて感じさせられる内容でした。

***************************************************************************

2026年3月13日(金) 13:00-17:00、情報機構社主催で、改訂予定PIC/S GMPガイドラインAnnex11に関するセミナを開催します。
改訂内容や対応のための準備にご興味をお持ちの方は是非ご参加ください。
●セミナ名:
 PIC/S GMPコンピュータ化システムの改訂動向とコンピュータバリデーション等への対応
~Annex11における新たな要求事項・変更点とCSVで注意すべき事柄~
●日時:
 2026年3月13日(金) 13:00-17:00
●会場:
 [東京・大井町]きゅりあん5階第2講習室
 http://www.johokiko.co.jp/access/kyurian/
●本講座ホームページアドレス:
 https://johokiko.co.jp/seminar_medical/AA2603L7.php
※講師紹介割引の利用をご希望の方は、方法をご案内いたしますので、橋本宛(hashimoto@digitalsynergy.co.jp)にご連絡ください。
 割引額は通常受講料金より、受講料より「11,000円引き(税込み)」いたします。
 1社2名様以上参加時、講師紹介割引・同時申込割引の併用で、1名様につき「13,200円引き(税込み)」となります。

株式会社デジタルシナジー 
〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1丁目101番地1 クロスゲート7階 TEL 045-550-5425 (平日10:00~17:00)

URLをコピーしました!