今回は、米国食品医薬品局(FDA) がイギリスの医薬品製造業者に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/nelson-co-ltd-720283-02122026
**************************** Warning Letter 320-26-46 概要***************************
2025年9月15日~9月19日のFDAによるイギリスの医薬品製造所の査察において、医薬品製造に関するCGMP違反がみつかり、
2026年2月12日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、医薬品の各ロットについて、好ましくない微生物がいないことが求められる医薬品の各ロットについて、適切なラボの試験を実施
することを怠った。(21 CFR 211.165(b))
<指摘1詳細>
貴社は、2歳の子供向けと表示されたものを含むホメオパシー医薬品を製造している。
貴社は、XX ml(ロットXX)及びXX(ロットXX)を含む医薬品を、重要な微生物特性(例:総微生物数、好ましくない微生物の有無)に関する
適切な試験をせずに出荷した。
全てのロットを試験するのではなく、貴社はホメオパシー医薬品の一部のロットのXX試験を実施した。また貴社は、貴社の医薬品XXの
リリース前に微生物試験を実施しなかった。
さらに貴社は、医薬品XXの使用期限を、変更を裏付ける適切な安定性データが無いのに延長した。例えば貴社は、安定性データはXXヶ月
の保存期間の裏付けしかないにもかかわらず、XX ml(ロットXX)の有効期限をXXから延長した。同様の手法が他の医薬品でもみつかった。
貴社は回答の中で、米国への出荷前に、医薬品XXのバルクの各ロットと、製品の各ロットと、貴社の医薬品に使用される成分XXの微生物
試験を実施したと述べている。また貴社は、米国で販売される全ての製品を対象とする微生物試験の戦略を決定するためのリスクアセス
メントと、2022年9月と2023年9月以降に米国にそれぞれ出荷された全ての医薬品XXの回顧的評価を準備することも同意している。
また我々は、貴社が、XX ml(ロットXX)を不合格にする予定であることも承知している。しかしながら、貴社は適切な微生物試験を実施せずに
出荷した医薬品の保管サンプルの試験を実施する約束をしていないので、貴社の回答は不十分である。
特に注目すべきは、貴社の医薬品XX(ロットXX)は、FDAの試験で微生物汚染が判明し、米国国境で差し止められ、持ち込みを拒否された
ことである。
リリース前に各ロットの試験をしなかったので、貴社は、医薬品XXの全てのロットは好ましくない微生物に汚染されていないという科学的
なエビデンスを持っていなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・ロットの処遇の判断の前に医薬品の各ロットを分析するために使用されている化学及び微生物学的規格のリストと試験方法
〇この文書の日付時点で使用期限内にある、米国に出荷された医薬品の全てのロットの品質を判断するために、保管サンプルの全て
の化学及び微生物学的試験を実施するためのアクションプランとタイムライン
〇各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
もしそれらの試験で、基準を満たさない医薬品が判明した場合は、顧客への通知や製品の回収などの迅速な是正処置を講じよ。
●指摘2
貴社は、品質管理部門に適用される適切な文書化された責任と手順を制定することを怠り、品質管理部門は適用される文書化された
手順に従うことを怠った。(21 CFR 211.22(d))
<指摘2詳細>
貴社の品質部門(QU)は、貴社の施設で製造された最終医薬品の品質に関するデータの信頼性を十分に監督し保証することを怠った。
例えば、貴社はQUによって印刷・署名された製造記録や最終製品の仕様書を含むCGMP文書を、不適切に保管し廃棄した。特に注目
すべきは、廃棄された原料の中に品質判定の“傾向外”の結果を示す手書きの付箋が見つかったが、この逸脱は実施時に適切に文書化
されておらず十分に調査もされていなかったことである。
貴社は、CGMP文書の発行と照合を追跡するためのQUの適切な手順を定めずに、記録の複製コピーを印刷した。さらに、調査の対象と
すべき不合格の結果を示す多数の分析用紙が廃棄されていた。重要な品質記録が不適切に廃棄されているので、これらの不備はデータ・
インテグリティの重大な懸念を示す。
貴社は回答の中で、適切な是正処置・予防処置(CAPA)を含むデータ・インテグリティの調査を終えたと述べている。また貴社は、貴社の
CAPAの実施後、製造所での手順と遵守をレビュするための製造所のデータ・インテグリティの監査を実施する外部の品質コンサルタント
を雇うつもりであると述べている。
貴社の回答は、CGMP文書の発行と照合のためにQUに十分なリソースを導入することを約束していなかった。また、貴社の外部の製造所
のデータ・インテグリティの監査は2026年5月まで予定されておらず、発見されたデータ・インテグリティの違反の範囲を考えると過度の
遅延である。さらに、貴社のコンサルタント契約は、適切な是正のためのガイダンスを提供するギャップ分析のためではなく、貴社の
是正処置の監査を目的としている。外部の監視なしに8ヶ月間是正処置が勧められていることと、独立した検証の遅れを合わせて考えると、
システムのデータ・インテグリティの不備に、タイムリに適切に対処されるという十分な保証が得られない。
データ・インテグリティは、データの生成、修正、処理、保持、アーカイブ、取得、送信、記録保持期間終了後のデータの廃棄を含むCGMPデータ
のライフサイクルを通じて、非常に重要である。
貴社の品質システムは不十分である。CGMP規制要件21 CFR part210,211を満たすために、品質システムとリスクマネジメントアプローチ
を実装する助けとして、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善の計画
アセスメントは、これに限定されないが、以下のことも含むべきである:
〇貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査及びその他全てのQUの職務遂行の監督と承認
●データ・インテグリティの改善
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性と完全性を適切に保証していない。
CGMPに従ったデータ・インテグリティの手順を制定して遵守するガイダンスについては、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。
我々は、貴社の作業を監査し、FDAの要件を満たす助けのために、独立した第三者のコンサルタントを使用していることを認識している。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・米国に出荷された医薬品のデータのレビュ結果を含むデータ記録及び報告における不正確な範囲の包括的な調査
データ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な説明を含めよ。
・見つかった不備が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠落の影響を受けた医薬品のリリースにより引き起こされる患者へのリスクの分析
と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
・全体的な是正処置・予防処置の計画の記述を含む、貴社の経営戦略
詳細な是正処置の計画は、微生物学的データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む、貴社で生成される全て
のデータの信頼性と網羅性をいかに保証するつもりかについて記述する必要がある。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社はCGMPの要件を満たすのを助けるために21 CFR 211.34に記載された適格性の
あるコンサルタントを雇うべきである。適格性のあるコンサルタントは、貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成
しようとする前に、貴社の全ての作業を対象に、CGMP遵守に関する6つのシステム(※)の包括的な監査を実施し、CAPAの完了と効果
を評価する必要がある。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的にCGMP
遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
※6つのシステム:品質システム、設備&装置システム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、試験管理システム
●追加の原薬のCGMPガイダンス
貴社はホメオパシーの原薬 (別名XX)を製造し、最終製品に使用している。
FDAは、原薬がCGMPに準拠して製造されているかどうかを判断する際に、ICH Q7に定められた期待を考慮する。原薬製造のための
CGMPに関しては、FDAのガイダンス文書Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients
を見よ。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発や
その他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品
製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了した
ことを確認するために査察を行うかもしれない。
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今回のウォーニングレターはイギリスの製薬会社に対するものでした。
いつもながら、ゴミの中から重要な文書や付箋を見つけるFDAの査察には感心させられます。
査察官からすると、ゴミは、品質システムやデータ・インテグリティの不備を示す証拠が隠れた”宝の山”なのかもしれません。
