FDA:米国の製薬会社に対するデータ・インテグリティ関連の指摘 (WL:320-26-127)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) が米国の製薬会社に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/curia-new-york-inc-728790-09182026

******************** Warning Letter 320-26-127 概要 ********************
2026年1月28日~2月5日のFDAによる米国ニューヨーク州にある医薬品製造所の査察において、原薬に関する
CGMPからの重大な逸脱がみつかり、2026年9月18日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社の原薬及び中間体が定められた規格や標準に準拠していることを保証するために実施された全ての試験から
得られた完全なデータを含む試験の管理記録の所持の不履行
<指摘1詳細>
貴社の原薬の適合性を判断するための貴社のレビュに電子の試験結果の全てが含まれてはいない。
貴社のラボの分析担当者は、製品サンプルが試験されていないことを確認する十分な文書や監督なしに、高速液体
クロマトグラフィ(HPLC)や超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)で、説明のつかない注入を日常的に行っていた。貴社
のラボでは、クロマトグラフィのデータの処理と分析に、EmpowerおよびTotalChromのソフトウエアを使用していた。
貴社の分析担当者は過去30ヶ月間にEmpowerを使用して数千回の説明のつかない注入を実施し、2025年10月だけ
でも70回以上TotalChromを使用して試験注入を実施した。Empowerのソフトウエアを使用した注入では、適切な
文書もなく“オペレータ”の役割ではなく、“開発者”の役割が使用されていた。例えば:
A.我々査察官は“開発者”の役割で注入された説明のつかない4回の試験注入が2026年1月14日にクロマトグラフィ
装置HPLC49で実施されたことを示す試験のクロマトグラムを発見した。貴社の分析担当者はこれらの試験注入が
いかなる製品、サンプル、分析にも関連づけられてないことを確認した。貴社は回答の中で、これらの注入は、XXの
スワブサンプルの試験によるものだとした。関連するラボノート830-7のページには、4回の試験注入に関する記述は
なかった。貴社の分析担当者は“開発者”の役割を使用して試験注入を行った理由をラボノートに一切記録していな
かった。
B.貴社の分析担当者は、2026年2月1日にクロマトグラフィ装置UPLC57で“開発者”の役割を使用して2回の説明の
つかない注入をしたことを示す試験を実施した。貴社の分析担当者は、貴社のQC監督者がXXの洗浄のスワブサン
プルを試験し、その結果はラボノート823-6に記録されたと述べた。しかし、ラボノートには、これらの説明のつかない
注入に関する記録はなかった。
これらの2件の事例について、貴社の回答は、試験注入は品質管理監督者による支援を受けたトラブルシューティン
グの一環として実施され、試験注入の影響はなかったと回答している。しかし、全ての試験注入の回顧的レビュで、
貴社は、十分な根拠がなく更なる調査が必要な注入が9件あることを確認した。
また貴社は回答の中で、Empowerの試験注入の約20%が“開発者”の役割で試験結果の取得または変更がされて
いたと回答しており、貴社の手順書SOP-RLS-000435のトレーニングの不徹底または理解不足を反映している。
CGMPサンプルや規制対象データに関する分析活動について“開発者”の役割を許可すれば、分析者の無許可または
文書化されていないサンプル分析を阻止することはできない。実施された説明のつかない全ての注入に関する
CGMPに関連するリスクを特定するための調査が含まれていないし、これらの試験注入が“開発者”の役割を使用した
分析担当者によって実施された理由についての説明がないので、貴社の回答は不十分である。
我々は、貴社が全ての試験注入を中止し、Empowerから“開発者”の役割を削除したことと、2021年1月から2023年
10月までの全ての試験注入の追加の回顧的アセスメントを提供するという約束を承知した。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・全ての試験注入に関し、試験注入がサンプル注入でなかったことを示す裏付け資料を添えた、包括的で独立した
調査報告書
 注入がサンプル注入であると特定された場合は、流通している原薬への影響の判断を含めよ。
・EmpowerおよびTotalChromに限らず、CGMP作業で使用されている全てのコンピュータ化システムを対象とする、
全ての施設における包括的で独立したデータ・インテグリティのアセスメント
●指摘2
貴社の施設で製造される原薬及び中間体がCGMPに準拠していることを保証する品質部門の責任の不履行
<指摘2詳細>
貴社の品質部門は、紙及び電子の記録の適切な管理を確実に行うことを怠った。2026年1月29日、我々FDA査察官
は、貴社のラボ内に保管されていたシュレッダ容器内で、ラボの記録の原本を確認した。例えば、pH値がXXと記載
されたpHメータのプリントアウト伝票の原本、XXグラムの値が記載された分析用天秤のプリントアウト伝票の原本、
レビュ担当者の署名入りの分析データレビュチェックリストを発見した。
貴社の回答は、これらの記録の不具合の影響はごくわずかであったと回答したが、貴社の回答は、これらの記録を
廃棄したことによる影響がごくわずかであったという結論を裏付けるエビデンスが不足している。貴社は2025年12月
19日にpHメータのプリントアウトを作成した人物と、それを廃棄した理由を特定できなかった。貴社の分析担当者は、
2026年1月25日付で天秤のプリントアウトした重量伝票を廃棄したが、この天秤プリントアウト伝票が廃棄された
理由は記録していなかった。さらに貴社は、廃棄された原本資料(例えば、特定のバッチ試験)とバッチとの関連付けが
できなかった。
廃棄された記録が特定の試験の分析と紐づけられていないため、影響が軽微であるという結論は十分な証拠に基づ
かないものである。手順書SOP-RLS-000346は機器のログブックの使用を義務付けるよう改訂されたが、貴社の
品質部門は作成された記録がシュレッダに廃棄された理由を調査することを怠り、適切な監督体制の欠如を示して
いる。このトレーサビリティの欠如の全容は、貴社の回答に十分に反映されていない。
加えて、我々査察官はシュレッダからCGMP活動が記録された貴社のラボノートのページのコピーを大量に発見
した。貴社のラボの職員は、オリジナルの記録ではなくオリジナルのデータのコピーをレビュし、その後、基礎となる
データの変更を確認することなく、分析ノートの原本に署名していた。
貴社の回答では、コピーのデータ確認は、全ての電子一次データを分析担当者のノートと照合して確認することを
義務付ける貴社の手順書SOP-RLS-000456に完全に違反していたことを認めている。
さらに、貴社の手順書RLS-SOP-PW-0047GMP“文書の保管、管理及び保存”は、バッチの分析に関する紙媒体の
記録を保管することを義務付けている。貴社の品質管理部門は、全ての製造管理記録がこの制定された手順に従っ
て保存されていることを保証することを怠り、貴社の施設で生成されたデータのインテグリティを保証するための適切
な管理を実施することを怠った。
我々は、貴社がXX棟のシュレッダ容器XXを撤去し、品質管理部門の管理課に移したことを認識している。しかし、貴社
の回答は不十分である。貴社のシュレッダ容器のデータのレビュには、査察中に確認された全てのシュレッダ容器の
中身が含まれていないようだ。貴社のプロトコル“シュレッダ容器の中身のレビュ”で、サマリレポートに含まれてない
容器は特定されているが、この省略についての説明がなかった。
貴社は、容器XXはサードパーティのサービスプロパイダによって回収され、オフサイトで廃棄されると報告していた。
貴社は過去の文書廃棄で廃棄された物の範囲を特定できない。
貴社の品質システムは、貴社が製造した医薬品の物質の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性と
インテグリティを十分に保証していない。FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance with Drug CGMP
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の施設でGMP文書のシュレッダ廃棄がどのくらいの期間で実施されてきたかの特定
・該当する記録保管期間における、全てのQCラボの装置の機器使用ログブックの欠如の範囲と潜在的な影響と、その
結果、GMP試験結果の帰属が不明または検証不能になる可能性の評価を含む、回顧的アセスメント
・QAのレビュなしにシュレッダが回収されたことを踏まえ、査察前に不適切に破壊された可能性のある記録の範囲に
関する回顧的アセスメント
・管理されていない文書化業務がGMP記録のインテグリティにどの程度影響を与えたかを判断するための、貴社の
QCラボの業務に関する回顧的レビュを含む、より広範なデータ・インテグリティのアセスメント
・全てのシュレッダ容器からみつかった文書に関する完全な最終調査レポート
 文書の分類、製品及び製造プロセスへの影響、最終評価から生じた逸脱事項を含めよ。
・貴社のサードパーティのコンサルタントが電子データをどのように評価するかを詳細かつ包括的に記述したデータ・
インテグリティの調査プロトコル
・データ、記録、報告における不正確さや矛盾の範囲に関する包括的な調査
 貴社の調査には以下の内容を含める必要がある:
 〇詳細な調査プロトコルと方法論;アセスメントの対象となる全てのラボ、製造業務、システムの概要;貴社が評価
  対象から除外する業務箇所がある場合はその理由
 〇データの不正確さの性質、範囲、根本原因を特定するための、現在及びかつての従業員へのインタビュ
  我々はこれらのインタビュが適格性のあるサードパーティによって実施されることを推奨する。
 〇貴社の施設におけるデータ・インテグリティの欠如の範囲のアセスメント
  省略、改ざん、削除、記録の破棄、記録の同時性の欠如、及びその他の結果を特定せよ。データ・インテグリティの
  欠如が発見された貴社の施設の全ての業務について記述せよ。
 〇試験のデータ・インテグリティの欠如の性質に関する包括的で回顧的な評価
  我々は潜在的な違反が特定された分野において専門知識を有した適格性のあるサードパーティが全ての事例を
  評価することを推奨する。
・確認された不具合が貴社の医薬品の品質に及ぼす潜在的な影響に関する最新のリスクアセスメント
 貴社のアセスメントは、データ・インテグリティ違反の影響を受けた医薬品の出荷によって患者に生じるリスクの
分析、継続的な業務によって生じるリスクの分析を含める必要がある。
・貴社全体の是正処置・予防処置(CAPA)の計画の詳細を含む貴社の経営戦略
 貴社の戦略には以下の内容を含める必要がある:
 〇分析データ、製造記録、FDAに提出された全データを含む、全てのデータの信頼性と完全性をどのように保証
  するかを記載した詳細な是正処置の計画
 〇現在のアクションプランの範囲と深さが調査結果とリスクアセスメントに見合っていることを示すエビデンスを
  含む、各データ・インテグリティの逸脱の根本原因に関する包括的な記述
  データ・インテグリティの違反に責任がある個人が貴社においてCGMP関連または医薬品申請データに依然と
  して影響を与える可能性があるかどうかを示せ。
 〇顧客への通知、製品回収、追加試験の実施、安定性を保証するために貴社の安定性プログラムへのロットの
  追加、医薬品申請アクション、苦情のモニタリングの強化等、貴社の医薬品の品質を保証し、患者を保護するため
  に貴社が実施した、または今後実施する予定のアクションを記述した暫定的な手段
 〇貴社のデータのインテグリティを保証するために設計された、手順、プロセス、方法、管理、システム、管理監督、
  人的資源(例:トレーニング、職員の改善)に対する改善の取り組みと強化について述べた長期的な手段
 〇データ・インテグリティの懸念を報告する従業員から匿名の苦情を受け取る権限を持ち、潜在的な違反が発生し
  た場合は必要に応じて外部機関からの専門知識を活用し、独立した品質保証機能により迅速に調査がされる
  ことを保証する権限を持ったデータ・インテグリティ遵守責任者を雇用する予定の確認
 〇すでに進行中または完了した上記活動に関するステイタス・レポート
●指摘3
不正アクセスやデータ変更を防ぐためのコンピュータ化システムに対する十分な管理の実施の不履行
<指摘3詳細>
我々査察官は、貴社の施設において、GMP分析用の電子コンピュータ化システムへのアクセスに使用されるユーザ
名とパスワードの共有を含む重大なデータ・インテグリティ違反を発見した。例えば、貴社の電子コンピュータ化シス
テムXXは、ラボの機器XXと連携し、個人の固有のユーザ名とパスワードによってアクセスを制限している。この管理
にも関わらず、貴社のラボの分析担当者は、XXのキャリブレーションとXXのサンプル試験を実施するために、別の
分析担当者のログイン情報を使用した。
認証情報の共有はデータ・インテグリティの原則に対する重大な違反であり、GMP要件にも反している。貴社の品質
システムは、この手順の検知と繰り返しの発生を防ぐことが出来なかった。
貴社の回答は、貴社が文書化された手順書SOP-RLS-00438“GMP業務におけるコンピュータ化システムの使用”に
おいて、ユーザ名とパスワードの共有を禁止していることを認めている。プロトコルRQA-P-0560に基づく貴社の
回顧的レビュは、2025年2月10日から2026年2月4日までの期間におけるスタンドアロンの分析機器に限定されて
いた。このレビュは、ユーザ名とパスワードによるアクセスを必要とする全てのコンピュータ化機器を網羅しておらず、
上記レビュ期間以外の不一致についても評価していない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・これに限定されないが、アクセスするためにユーザ名とパスワードによる認証を必要とするスタンドアロンのシス
テムを含む貴社の施設の全てのコンピュータ化システムと、米国市場にある現在使用期限内の販売された製品に
ついて当該装置が試験に使用された全ての製品の回顧的レビュ
・このデータ・インテグリティの範囲を完全に把握するために、過去3年間の全てのGMP関連の統合コンピュータ化
システムを対象とした包括的で独立したアセスメント
・貴社の業務全体において、帰属可能、判読可能、網羅性、原本性があり、正確で同時性のある(ALCOA)記録を実装
するための貴社全体のCAPAの計画の詳細を含む、貴社の経営戦略
 詳細な是正処置計画では、微生物学的データ、分析データ、製造記録、FDAに提出された全データを含む全ての
データの信頼性と完全性を貴社がいかに保証するかを記述する必要がある。
・貴社のラボの業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
 このレビュに基づき、貴社のラボのシステムを改善し、その有効性を評価するための詳細な計画を提出せよ。
●結論
貴社は、あらゆる逸脱の根本原因を調査・特定し、これらの違反及びその他の違反が発生しないよう、将来にわたって
継続的なコンプライアンスを保証するための是正処置・予防処置を実施する責任を負う。
逸脱が未解決の場合、他の連邦機関との契約を締結できなくなる可能性もある。逸脱に対処しない場合、FDAは輸出
証明書の発行を保留する可能性もある。全ての逸脱に完全に対応がなされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認する
まで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するかもしれない。我々は、
貴社が全ての逸脱に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
貴社施設で製造される医薬品の供給に支障をきたす可能性のアクションを検討している場合は、貴社が法令を遵守
するための最も効果的な方法についてFDAと協力できるよう、直ちにCDERの医薬品不足担当部署に連絡せよ。
*****************************************************************

今回は、米国の製薬会社に対するウォーニングレターで、役割(開発者/オペレータ)の不適切な利用、試験記録の
不適切な管理、機器使用ログの不適切な管理、原本の不適切な取り扱い、ユーザ名とパスワードの使い回し等、
データ・インテグリティを損なう業務への指摘がされていました。
どの指摘もどこの会社でも起こりうる内容で身近に感じました。

株式会社デジタルシナジー 
〒231-0062 神奈川県横浜市中区桜木町1丁目101番地1 クロスゲート7階 TEL 045-550-5425 (平日10:00~17:00)

URLをコピーしました!