FDA:アメリカの企業に対するデータ・インテグリティ関連の指摘 (WL:320-25-114)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) がアメリカ国内の医薬品製造業者に対しデータ・インテグリティの欠落を指摘したウォーニングレター
を取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/person-covey-inc-711191-09232025

**************************** Warning Letter 320-25-114 概要***************************
2025年1月27日~2月6日のFDAによるカリフォルニア州の医薬品製造所の査察において、医薬品製造に関するCGMP違反がみつかり、
2025年9月23日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社の品質管理部門は、製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された規格を満たすことを保証する
責任を果たすことを怠った。 (21 CFR 211.22)
<指摘1詳細>
A.貴社の品質部門(QU)は複数のOOS(Out-of-Specification)の結果を適切に文書化し調査することを怠った。具体的には、我々査察官は、
以下のことを確認した:
・バルク中間体のロットXXは、次の工程にリリースする前に、分光光度計XXを使った有効成分含有量(塩化アルミニウム6水和物)試験で4回
不合格になった。貴社は、XXサンプルの合格結果を得た後、当該物質をリリースしたが、これはバルクロットXXの唯一の合格の試験結果で
あった。貴社のQUは、はじめのXXの試験結果は無視し調査しなかった。
・査察では、“システム管理者”が、ソフトウエアXXの唯一のユーザタイプで、ラボの職員はウインドウズとソフトウエアシステムXXに共通パス
ワードを使用していたことが記録されている。また、監査証跡は、分析後または制定された頻度で独立したレビュが行われておらず、電子の
ローデータや印刷されたハードコピーデータのレビュも行われていない。
貴社は回答の中で、“データ・インテグリティに関する正式な手順はこれまで存在しなかった”と述べ、今後策定することを約束しているが、貴社
の回答は不十分である。貴社の回答には、貴社全体における文書化の不備の程度と、貴社が製造を続けている医薬品の安全性、有効性、
品質への影響を判断するためのアセスメントやコミットメントが含まれていない。
貴社の品質システムは、貴社の製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性とインテグリティを適切に保証していない。
CGMPに準拠したデータ・インテグリティの手法を確立し遵守するガイダンスとして、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・米国で流通している医薬品に関するデータのレビュ結果を含む、データ記録及び報告の不正確の範囲の包括的な調査
貴社のデータ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な説明を含めよ。
・発見された不具合が貴社の医薬品の品質に及ぼす潜在的な影響の最新のリスクアセスメント
貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースにより引き起こされる患者へのリスクの分析と、
継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含める必要がある。
・全体的な是正処置・予防処置の計画の詳細を含む、貴社の経営戦略
詳細な是正処置の計画には、微生物学的データ、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成される全ての
データの信頼性と網羅性をいかに保証するつもりかについて記載する必要がある。
B.適切な監視を保証するための適切な手順が貴社のQUによって遵守されていない。
2021年11月18日、貴社の品質保証(QA)部門及び品質管理(QC)部門は、最終製品の高いpH値により、日焼け止め製品XXのロットXXの
廃棄処分を承認した。しかしこのロットは、貴社の手順で要求されている再加工プロトコルの事前承認なしに、2022年3月に再加工された。
実施された再加工は、同時に記録されていなかった。査察では、再加工された日焼け止めXXのロットのバッチレコードが作成されていない
ことも記録された。その代わりにQC管理者は以下の情報が含まれていない、後処理の社内メモを発行した:追加された成分のロット番号、
ロットの再加工に使用された具体的な装置、混合速度と時間、最終容器の説明とロット番号、再加工されたロットの重量と収量、追加の
加工時間、サンプリングの詳細、充填数、付与された使用有効期限
ロットがリリースされた後、QC管理者は、リリース日、容器のサイズ、リリースされた個数を示すメールを配布した。査察では、QA管理者が
廃棄から再加工に戻すロットXXの処遇の決定に関与していなかったことが記録された。
貴社は回答で、指摘を認め、貴社のQUの役割、責任、権限を再定義することを約束しているが、ロットXXとQUの承認が文書化されずに
リリースされた可能性がある他のロットの、再処遇決定、再加工、リリースについての詳細な調査の実施を約束していないので、貴社の回答
は不十分である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・QUが効果的に機能するために権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメントと改善の計画
アセスメントは、これに限定されないが、以下のことも含む必要がある:
〇貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
〇全ての医薬品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査及びその他全てのQUの職務の監督と承認
〇これに限定されないが、貴社の経営陣が、新たな製造/品質の問題に積極的に対処し、継続的な管理状態を保証するためのタイムリな
リソースの提供を含む、品質保証と信頼性の高い作業をいかにサポートするかについての記述
●指摘2
貴社は、ロットがすでに出荷されたかどうかに関わらず、制定された規格を満たさないロットまたはその成分の説明のつかない不一致や
不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘2詳細>
3つのOTC医薬品XX、XX、XXは、長期室温保管条件下の複数のタイムポイントであらかじめ定義された品質特性を満たさなかった。OOS
の根本原因のタイムリかつ徹底的な調査が実施されなかった。
・日焼け止め製品XXの長期安定性試験の複数の高いpHの不具合が、OOS No.14で調査された。調査範囲に、ロットXXの4件の安定性
間隔の不具合と、ロットXXに関する2件の不具合が含まれていた。フェーズIの調査では試験成績に矛盾は確認されなかったが、不合格に
なった6つのタイムポイントのうちのどれがラボの確認の対象だったかは特定されなかった。各ロットの最終タイムポイントにおける保管品
の再検査で、最初の不合格が確認されたが、無関係の4つの保管品も検査され、“...問題は製品の配合に起因する”ことが示された。
フェーズIIの調査が必要かというOOSのテンプレートの質問は、未完了で回答されないままだった。
・シャンプーXXの安定性不良に関するOOS調査で傾向と思われるものが特定され、“pHが範囲を超えているようだ...ロットXXは全ての
温度...全ての月...で範囲を超えている”と結論付けられた。調査のサマリは、“製品のさらなる調査が必要である”と結論づけた。しかし、
フェーズIIの調査が必要かというOOSのテンプレートの質問には、フェーズIIの調査は必要ないという回答が示された。
・コールタール含有量の不良(シャンプーのロットXXとXX)のフェーズIのOOS調査では、関連する根本原因が特定されなかった。分析法の
適合性が潜在的な根本原因として示唆されたが、分析結果の妥当性に関する更なる調査もフェーズIIの調査も行われずに、QC管理者に
より却下された。
フェーズIの調査が結論に至らず、傾向の認識が記録されているにも関わらず、フェーズIIの調査が完了することなくOOSの調査は繰り返し
終了された。フェーズIの調査は、“フェーズIIの調査が必要でない場合にのみ”という手順に従い、最高コンプライアンス責任者により承認
された。これらの医薬品は、現在市場にあり、使用期限内である。
貴社の回答は不十分である。貴社は“不一致は、不適合、OOS、QAチームによる逸脱のいずれかで対応済みである”と主張している。ラボの
エラーの可能性だけでフェーズIの調査を終了するのは不十分である。調査でラボのエラーの決定的なエビデンスが不足している場合は、
製造の原因の可能性の徹底的な調査が実施されなければならない。不具合、OOS、傾向外、その他の予期せぬ結果の取り扱いと、調査の
文書化に関する更なる情報については、
FDAのガイダンス文書 Investigating Out-of-Specification (OOS) Test Results for Pharmaceutical Productionを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・現在米国市場にあり、この文書の日付時点で使用期限内の医薬品に関する、全ての無効化されたOOS(工程内試験、リリース試験、
安定性試験を含む)の結果の回顧的な独立したレビュと、各OOSに関する以下の事を含む分析結果を要約したレポート:
〇無効化されたOOSの結果に関する科学的な正当化の理由とエビデンスが、ラボのエラーを決定的または非決定的に示しているかどうか
判断せよ。
〇ラボの根本的な原因を決定的に特定した調査に関して論理的根拠を示し、同じまたは類似の根本原因に対して脆弱なその他全ての試験
方法が改善のために特定されていることを保証せよ。
〇回顧的レビュにより明らかになった、ラボ内で決定的でない根本原因がみつかったか、または根本原因が特定されていない全てのOOS
の結果について、徹底的な製造のレビュ(例:ロットの製造記録、製造手順の妥当性、装置/施設の適合性、原材料のばらつき、工程の能力、
逸脱の履歴、苦情の履歴、ロットの不具合の履歴)を提出せよ。各調査に関し、潜在的な製造の根本原因のサマリと、製造作業の改善策を
提出せよ。
・貴社のOOSの結果の調査システムに関する包括的なレビュと、改善計画も提出せよ。是正処置・予防処置は、これに限らないが、以下の事
への対応を含む必要がある:
〇ラボの調査のQUの監督
〇ラボの管理の有害な傾向の特定
〇ラボのばらつきの原因の解決
〇ラボの原因が決定的に特定できない場合は、潜在的な製造の原因の徹底的な調査の開始
〇各調査とそのCAPAの適切な範囲設定
〇これら及びその他の改善を含む改訂されたOOSの調査手順
この文書への回答の中で、米国で流通しているOTC医薬品の全てのロットの製品品質と患者の安全性のリスクに対処するための、顧客
への通知、回収、市場からの撤退の可能性を含むアクションプランを提出せよ。
●指摘3
貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を持っていることを
保証するために設計された製造と工程管理に関する適切に文書化された手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘3詳細>
OTC医薬品であるシャンプーXXとシャンプーXXの、異なる不活性成分の導入を含む処方変更が、再現性のある商用の製造手順がある
こと、または、処方変更後の製品が使用期間全体を通して一貫して品質特性を満たすことを示す文書化されたエビデンスなしに実施された。
製品は、プロセスバリデーションの実施や、使用期限を制定するための許容可能な安定性データの証明なしに、2013年7月から2018年5月
の間に処方変更が行われた。両製品のプロセスバリデーションは1999年に最後に実施されていた。査察では、同時期に日焼け止めXXの
処方の同様の変更も、プロセスバリデーションと安定性データなしに行われたと記録された。日焼け止めXXのプロセスバリデーションは
2002年に最後に実施されていた。
製品の処方変更後、上記のXXで言及されているOOSの不具合が3つのOTC医薬品全ての長期室温安定性試験中に検出された。日焼け止め
XXのロットXX(2023年4月)とシャンプーXXのロットXX(2023年11月)に関する製造工程パラメータの変更が手書きでコメントされていて、
工程の順序、使用装置、温度、時間、数量、容量が正当な理由もなく変更された。2023年8月、貴社は、品質管理部門による“日常的な”工程内
の製造変更を文書化するために、製品調整フォーム(QCF-068)を導入した。2024年11月のOOS 調査No.14では、日焼け止めXXの長期安定性
のpHの不適の要因として、“日焼け止めの製造工程が絶えず変化していること”が考えられる指摘した。
貴社のCAPAは専門コンサルタントの意見及び提案を2022年初頭から実施することを約束しているため、貴社の回答は不十分である。貴社は、
米国で流通しているOTC医薬品の全てのロットについて、製品品質や患者の安全性のリスクに対処するための、意味のある是正処置、暫定
処置、顧客への通知・回収・市場からの撤退の可能性も含むアクションプランの策定を行うことを怠った。さらに貴社は、医薬品の品質のモニタ
リングを続けるための、日焼け止めXXまたはシャンプーXXの代表的なロットを2024年の年次安定性試験に登録することとシャンプーXXの
2023年と2024年の試験に登録することを中止した。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクル全体にわたって管理状態を保証するための、関連する手順を添えた、貴社のバリデーションプログラムの詳細なサマリ
工程性能適格性評価(PPQ)に関する貴社のプログラムと、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの継続的な
監視のプログラムについて説明せよ。
・貴社の市販医薬品ごとの適切なPPQ実施のためのタイムライン
・工程性能プロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順
・継続的な管理状態を保証するための、ロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む、貴社の各製造工程の設計、バリデー
ション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
貴社の装置及び施設の適格性評価に関するプログラムも含めよ。
・貴社の安定性プログラムの適切性を保証するための、包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
改善プログラムには、これに限らないが、以下の事を含める必要がある:
〇安定性を示す方法
〇出荷許可前の、販売される密閉容器内の各医薬品の安定性の検証
〇うたわれている使用期限が妥当かどうか判断するための、各製品の代表的なロットが毎年プログラムに追加されるような継続的な
安定性プログラム
〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
・貴社の修正された安定性プログラムのこれら及びその他の要素を述べた全ての手順
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、貴社がCGMPの要件を満たすのを助けるために21 CFR 211.34に記載された適格性のある
コンサルタントを雇う必要がある。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の
経営陣には、継続的にCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●未承認の新薬
省略
●米国内で販売するために製造された化粧品
省略
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、調査して違反の原因を判断し、再発やその他の
違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に即座かつ適切に対処しない場合、差し押さえや差止命令など、予告なく規制措置または法的措置
が取られる可能性がある。違反が未解決の場合、他の連邦機関との契約を締結できなくなる可能性もある。
違反に対処しない場合、FDAは輸出証明書の発行を保留する可能性もある。全ての違反に完全に対応がなされ、我々が貴社のCGMPの遵守
を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また我々は、貴社が全ての違反
に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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本ウォーニングレターでは、ラボのシステムについて、職員が皆、管理者権限を持ち、ウインドウズとソフトウエアのパスワードが共有されている
ことが指摘されていました。
ラボのシステムは、使用者が限られているうえに、ネットワークから切り離されてスタンドアロンで運用される場合は管理が甘くなる傾向がある
かもしれませんが、他のシステム同様、しっかりした管理が必要です。
このウォーニングレターからは、監査証跡のレビュがされていない、データ・インテグリティに関する手順がない等、この会社が昨今特に重要に
なっているデータ・インテグリティへの対応をおろそかにしていた状況もうかがわれます。

株式会社デジタルシナジー 
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