FDA:マレーシアの企業に対する指摘 (WL:320-26-37) & マレーシアの製薬産業

今回は、米国食品医薬品局(FDA) がマレーシアの医薬品製造業者に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/fulijaya-manufacturing-sdn-bhd-719172-01142026

**************************** Warning Letter 320-26-37 概要***************************
2025年7月14日~7月18日のFDAによるマレーシアの医薬品製造所の査察において、医薬品製造に関するCGMP違反がみつかり、2026年
1月14日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、制定された規格と標準に従っていることを保証するために必要な全ての試験から得られた完全なデータを含むラボの記録を保証する
ことを怠った。 (21 CFR 211.194(a))
<指摘1詳細>
貴社のラボの記録は、実施された分析を裏付ける完全でオリジナルのデータが不足していた。例えば、我々査察官は、2025年5月以前のOTC
医薬品の微生物のリリース試験及び安定性試験のローデータを求めたが、貴社の担当者は、ログブックは入手できないと述べた。
全ての試験に関する試験結果や試験条件の完全で正確な記録が作成または保持されていない場合、データの信頼性は根本的に損なわれる。
さらに、信頼できるデータの不足は、適用される標準への適合性を保証するという機能を果たすための品質部門の能力を損なう。
貴社の品質システムは、貴社が製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるためのデータの正確性と完全性を適切に保証していない。
CGMPに準拠したデータ・インテグリティの実務の確立と遵守に関しては、
FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMPを見よ。
我々は、貴社の改善を助ける適格性のあるコンサルタントを雇うことを強く勧める。この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・米国に出荷された医薬品に関するデータのレビュ結果を含むデータ記録及び報告における不正確な範囲の包括的な調査
 データ・インテグリティの欠落の範囲と根本原因の詳細な説明を含めよ。
・見つかった不備が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
 貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠落の影響を受けた医薬品のリリースにより引き起こされる患者へのリスクの分析と、
継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
・全体的な是正処置・予防処置(CAPA)の計画の記述を含む貴社の経営戦略
 詳細な是正処置の計画は、分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成する全てのデータの信頼性と網羅性
をいかに保証するつもりかについて記述する必要がある。
●指摘2
貴社は、成分、医薬品容器、蓋、工程内原料、ラベル、医薬品製品が同一性、濃度、品質、純度の適切な標準に準拠していることを保証するため
に設計された、科学的に理にかなって適切な規格、標準、サンプリング計画、試験手順を含むラボの管理を確立することを怠った。(21 CFR
211.160(b))
<指摘2詳細>
貴社は、貴社の医薬品と成分が品質及び純度の適切な標準に適合していることを保証するための貴社の微生物学的試験の方法が適切で
あると示すことを怠った。具体的には、貴社は、医薬品のリリース試験及び安定性試験に使用する前に適合性を保証するための微生物培地の
増殖促進試験を実施することを怠った。さらに、貴社はセパシア菌群(BCC)の試験を実施せず、医薬品の成分として使用されるXXが意図した
使用目的に適していることを保証するための適切なサンプリングと試験が不足していた。
貴社は回答の中で、独立した検証なしに、サプライヤの試験成績書(CoA)のみに基づいて、培地の増殖促進試験の結果を受け入れたことを
認めた。貴社は、貴社のBCCのためのXXシステムの適合性試験も評価も実施しなかったことを認めた。貴社は、培養培地の品質を検証し
適合性試験を実施するために、適格性のあるサードパーティの試験機関を利用することと、BCCのためのXXシステムのサンプリングと試験
を開始することを約束した。貴社の回答は不十分である。特に、貴社の回答は、最近の社内の微生物限度試験のデータのレビュは、微生物
の検出は可能で、現在の試験プロセスの有効性が実証されていると述べていたが、この文書で指摘されているように社内の微生物限度試験
には欠陥がある。
各医薬品に存在する有害な微生物を検出する微生物学的試験方法の能力は立証される必要がある。検証されていない、または、バリデート
されていない方法で生成された試験結果は、消費者を危険にさらす可能性がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のラボの実務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力に関する包括的で独立したアセスメント
 このレビュに基づき、貴社のラボのシステムを改善し、効果を評価するための詳細な計画を提出せよ。
・試験方法とそのバリデート/検証された日付を含む、ロットの処遇を判断する前に貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用された
化学及び微生物学的な規格のリスト
〇この文書の日付時点で使用期限内にある米国に出荷された医薬品の全てのロットの品質を判断するために、保管サンプルの全ての
微生物学的試験を実施するためのアクションプランとタイムライン
〇各ロットの保管サンプルから得られた全ての試験結果のサマリ
  もし、それらの試験で基準を満たさない医薬品が判明した場合は、顧客への通知や製品の回収などの迅速な是正処置を講じよ。
・信頼できる微生物の計数と好ましくない微生物の適切な特定を保証するための、過去3年間の医薬品の微生物学的試験における全ての
培養培地の適合性を保証するための、過去の試験に関する回顧的なリスクアセスメント
●指摘3
貴社は、医薬品の安定性を評価するために設計され適切に文書化された試験プログラムを制定し、それに従うことを怠った。また、適切は
保管条件と使用期限を決定するために安定性試験の結果を使用することを怠った。(21 CFR 211.166(a))
<指摘3詳細>
貴社は、ラベルに表示された使用期間を通じて、貴社の医薬品の品質特性が許容可能であることを示すための適切な安定性データを
持っていなかった。貴社の医薬品内の各有効成分の分析試験は、事前に定められたそれぞれのタイムポイントの間隔で実施されていな
かった。さらに貴社は、不純物に関する適切な限度値を制定せず、貴社の医薬品における不純物の存在についても評価していなかった。
貴社の回答は不十分である。貴社は、貴社の医薬品の安定性の加速試験データを提供したが、全ての有効成分と不純物に関する試験を
含んでいなかった。例えば、XXの安定性データには、貴社の有効成分の1つであるXXと不純物の試験が不足していた。
さらに、2024年11月12日の連絡で、貴社は有効成分の試験を必須とするよう、貴社の安定性試験の手順を改訂することを約束していた。
この連絡は、FD&C Act 704(a)(4)、21 U.S.C 374(a)(4)に基づく記録及びその他の情報の開示請求への回答である。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の安定性プログラムの妥当性を保証するための、包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
 貴社の修正されたプログラムは、これに限らないが、以下の事を含める必要がある:
 〇安定性を示す方法
 〇出荷許可前の、販売される密閉容器内の各医薬品の安定性の検証
 〇うたわれている使用期限が妥当かどうか判断するための、各製品の代表的なロットが毎年プログラムに追加されるような継続的な
安定性プログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
・修正された安定性プログラムのこれら及びその他の要素を述べた全ての手順
●契約試験機関の使用
医薬品はCGMPに準拠して製造されなければならない。FDAは、多数の医薬品製造業者が試験機関などの独立した請負業者を使用
していることを認識している。FDAは請負業者を製造業者の延長とみなす。例えば、特定の医薬品成分の同一性試験(例:USP XX内
のXXの存在)を実施する契約試験機関は検証済のUSPの手法を使用しなければならない。
XXに汚染された成分の使用は、特に医薬品XXにおいて、世界中の人々にさまざまな致命的な中毒事件を引き起こしてきた。貴社は、
使用されている方法が適切にバリデートまたは検証されていることを保証するために、契約試験機関が実施した全ての試験のアセス
メントを実施しなければならない。FDAのガイダンス文書XXを見よ。
貴社には、医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を保証するために、FD&C Act501(a)(2)(B)に従って製造されていることを保証
することが求められている。FDAのガイダンス文書Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreementsを見よ。
●品質システム
貴社の品質システムは不十分である。CGMP規制要件21 CFR part210,211を満たすために、品質システムとリスクマネジメントアプ
ローチを実装する助けとして、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社がCGMPの要件を満たすのを助けるために21 CFR 211.34に記載された適格性のある
コンサルタントを雇うべきである。貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。
貴社の経営陣には、継続的にCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、違反を調査し、原因を判断し、再発や
その他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品
製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了した
ことを確認するために査察を行うかもしれない。
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今回のウォーニングレターはマレーシアの製薬会社に対するものでした。
マレーシアといえば、今回の製薬会社に対してではありませんが、2025/12/11にEUからもマレーシアの製薬会社に対して
GMPノンコンプライアンスレポートが出されていました。
マレーシアの製薬産業はどんな状況なのか気になって調べてみたところ、昨今マレーシアでは、政府が
“New Industrial Master Plan (NIMP) 2030”という計画に基づいて製薬産業を後押ししていることもあって、製薬産業が成長して
いるようです。
ならばマレーシアは中国やインドに代わる供給国になりうるのかをChatGPTに聞いてみたところ、規模的な面で全面的代替は難しい
うえに、マレーシア自体が原薬を中国・インドに依存しているという課題があるが、政治的安定性や、英語圏であること等から、補完的
な代替供給国になる可能性は十分にあるとのことでした。イスラム市場の優位性など、なかなか面白い回答でした。
詳細は以下の通りです。

************* マレーシアの製薬産業が中国・インドに取って代わる可能性に関するChatGPTの回答 *************
① 現在の立ち位置の比較

 項目 中国 インド マレーシア
API生産世界最大級世界最大級小規模
ジェネリック強い非常に強い中程度
バイオ医薬品拡大中成長中初期段階
製造コスト低〜中
規制対応改善中US/EU対応豊富一部企業のみ

👉 規模ではまだ大きな差があります。
② 代替可能性が議論される背景

近年、欧米諸国では
・医薬品サプライチェーンの中国依存リスク
・インドのAPI依存構造(原料の多くを中国に依存)
・地政学リスク
が問題視されています。
特に
・米国食品医薬品局
・欧州医薬品庁
は供給多様化の必要性を強調しています。その流れでASEANが注目されています。
③ マレーシアの強み
✅1. 政治的安定性
ASEAN内では比較的安定。
✅2. 英語圏・コモンロー
欧米企業との親和性が高い。
✅3. ハラール医薬品ハブ
イスラム市場向け医薬品で優位性。
✅4. 高品質志向
一部企業はUS FDA認証工場を保有。
✅5. 地理的分散効果
ASEAN域内での供給拠点として評価上昇。
④ しかし課題も大きい

❌ 1. 規模が圧倒的に小さい
中国・インドは「価格競争力+大量生産」。
マレーシアは国内市場も小さい。
❌2. API自給率が低い
依然として原料の多くを中国・インドに依存。
❌3. 人材層の厚み
研究開発力ではまだ限定的。
❌4. コスト競争力
人件費はインドより高い。
⑤ 現実的なシナリオ
🔹シナリオA:完全代替 → ほぼ不可能(短〜中期)
規模・価格で追いつくのは困難。
🔹シナリオB:高付加価値分野で補完 → 現実的
ニッチジェネリック
高品質APIハラール医薬品
欧米向け中規模ロット生産
バイオシミラー製造受託
👉 「China + 1」「India + 1」戦略の受け皿になれる可能性。
⑥ 中長期(2030年以降)の可能性
政府のNIMP 2030が成功すれば:
・API国内生産拡大
・バイオ医薬品製造誘致
・外資系CDMO誘致 が進めば、部分的な代替拠点としての存在感は高まります。
🔎 結論
全面的代替は難しい
リスク分散の一翼は担える
高品質・特定市場では競争力あり
今後5〜10年で“補完型ハブ”になる可能性はある
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2026年3月13日(金) 13:00-17:00、情報機構社主催で、改訂予定PIC/S GMPガイドラインAnnex11に関するセミナを開催します。
改訂内容や対応のための準備にご興味をお持ちの方は是非ご参加ください。
●セミナ名:
 PIC/S GMPコンピュータ化システムの改訂動向とコンピュータバリデーション等への対応
~Annex11における新たな要求事項・変更点とCSVで注意すべき事柄~
●日時:
 2026年3月13日(金) 13:00-17:00
●会場:
 [東京・大井町]きゅりあん5階第2講習室
 http://www.johokiko.co.jp/access/kyurian/
●本講座ホームページアドレス:
 https://johokiko.co.jp/seminar_medical/AA2603L7.php
※講師紹介割引の利用をご希望の方は、方法をご案内いたしますので、橋本宛(hashimoto@digitalsynergy.co.jp)にご連絡ください。
 割引額は通常受講料金より、受講料より「11,000円引き(税込み)」いたします。
 1社2名様以上参加時、講師紹介割引・同時申込割引の併用で、1名様につき「13,200円引き(税込み)」となります。

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