今回は、米国食品医薬品局(FDA) が中国の医薬品製造業者に対しデータ・インテグリティの欠落を指摘したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/zhejiang-huahai-pharmaceutical-co-ltd-707145-06062025
**************************** Warning Letter 320-25-78 概要 ****************************
2025年1月16日~1月24日のFDAによる中国の医薬品製造所の査察において医薬品製造に関するCGMP違反がみつかり、2025年6月6日付
でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、公的要求またはその他の制定された要求を超えて、医薬品の安全性、同一性、濃度、品質、純度を変える可能性のある誤動作や汚染を
防ぐために、装置や器具を洗浄・維持し、医薬品の性質のために適切に相応しい間隔で消毒・滅菌することを怠った。(21 CFR 211.67(a))
<指摘1詳細>
貴社はXXなどの様々な症状の治療に使用される処方医薬品を製造している。貴社の非専用製造装置の洗浄手順は不十分である。我々査察官
は、洗浄記録に製品切り替え洗浄が行われたと記録されたXXダクトと付属バルブを含むいくつかの非専用装置の表面に残留物を発見した。
貴社は以前のFDAの査察で、XXのXXダクト内に未知の残留物があることも指摘されていた。汚れた面上の空気の流れは、XX内で加工される
医薬品の汚染を促進する可能性がある。さらに査察中の貴社の分析試験で、これらの残留物に複数の有効成分が含まれていることを確認した。
また、残留物は前もってクリーンと表示されたXX装置の製品接触面と非接触面の両方で確認された。
貴社は回答の中で、交叉汚染のリスクは最小限であると述べている。貴社の論理的根拠には、医薬品の保存品のサンプルの試験結果と交叉
汚染シミュレーション試験が含まれる。また、貴社は、洗浄手順を見直したことを示し、洗浄度を確認するためにXX及びXX装置は適切に検査
され、貴社の洗浄記録に記録されていると説明している。
貴社の回答は不十分である。貴社の医薬品の保存品のサンプルの試験結果と交叉汚染シミュレーション試験を含むリスクアセスメントは、
目に見えて汚れた装置からの汚染物質が製品に含まれていなことを科学的に証明できなかった。さらに貴社の調査は、潜在的なリスク要因
としての微生物汚染のアセスメントが含まれていなかった。
汚染は一般的に不均一に分布している。回顧的な試験から得られたデータ(例:保管サンプル)は、ロットの他の部分の汚染の程度を回顧的に
評価する能力に限界がある。小さなサンプルサイズの試験から得られた最低または最高の結果では、貴社で確認された汚染の危険にさらされ
たロット内に存在する最小または最大の汚染レベルの実際の範囲が明らかになる可能性は低い。その結果、貴社で製造されたロットの汚染
レベルのばらつきの範囲は、依然として大きな残留の不確実性によって特徴付けられる。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・交叉汚染の危険の範囲を評価するための洗浄効果の包括的で独立した回顧的なアセスメント
残留物の特定、不適切に洗浄された可能性のあるその他の製造装置、および交叉汚染された製品が流通のためにリリースされた可能性
があるかどうかの評価を含めよ。アセスメントは、洗浄手順と実務の不備を特定し、原薬と最終製品の両方を含む複数の製品の製造に
使用される製造装置の各部分を網羅する必要がある。
・洗浄プロセスと実務の適切な改善と、完了までのタイムラインを含む、貴社の洗浄プログラムの回顧的なアセスメントに基づく是正処置・
予防処置(CAPA)
装置洗浄のライフサイクル管理のプロセスにおける脆弱性の詳細な要約を提供せよ。洗浄効果の向上、全ての製品と装置に関し、適切な
洗浄実施の継続的な検証の改善、その他の必要な改善を含む、貴社の洗浄プログラムの改善について説明せよ。
・この文書の日付時点で有効期限内の米国向けに販売されたXX及びXX装置で製造された医薬品の全てのロットの保管サンプルの微生物
試験の実施に関するアクションプランとタイムライン
●指摘2
貴社は、適切なサイズが具体的に規定されたエリア内で作業を行うことや、無菌処理エリア内における汚染や取り違えを防ぐために必要な
分離または規定されたエリアまたはその他の管理システムを持つことを怠った。(21 CFR 211.42(c)(10))
<指摘2詳細>
貴社はXXを含む様々な症状の治療に使用されるXX医薬品も製造している。我々査察官は、ISO 5(グレードA)エリア内のHEPAフィルターの
下のXXとXXの上の間に2cm×126cm の非滅菌テープを確認した。XXはしっかりと固定されていなかった。一方のXXはもう一方のXXよりも
低くぶら下がっていて、ネジが欠けているように見えた。貴社は、テープは、2024年4月以降、XX間の清掃を容易にするために使用されたと
述べた。貴社の品質部門(QU)は無菌エリア内での非滅菌テープの使用について知らされておらず、テープは、この査察中にFDA査察官が
確認するまで気づかれずに洗浄度分類エリアに残っていた。
貴社は回答の中で、気流パターン、洗浄実務、環境モニタリング結果(生存不能および生存可能な微粒子)、およびロットと培地充填の回顧的
レビュのアセスメント後、製品への影響はないと述べている。
貴社の回答は不十分である。貴社の回答は、充填作業中に変更が加えられた時に施設と装置の適合性を保証するQUの役割の包括的な
評価が欠けている。QUの承認なしに分類エリアに変更がされているのか、それとも、QUが制定された手順と時間枠に従って分類エリアの
目視検査を定期的に行っているのか、貴社の回答では不明である。貴社の回答は、テープはXXの間の隙間を埋めることにより洗浄を容易
にするために使用されたと言っているが、貴社の回答は、XXは適切にしっかり固定されていなかったというFDA査察官の指摘に対処して
いない。
貴社が無菌処理を使用して無菌医薬品を製造する際のCGMP要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス文書Sterile Drug Products
Produced by Aseptic Processing – Current Good Manufacturing Practiceを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・これに限らないが以下の独立したアセスメントを含む、貴社の無菌工程、装置、施設に関する全ての汚染の危険の包括的なリスクアセス
メント
〇グレードA(ISO 5)エリア内のすべての人間の相互作用
〇装置の配置と人間工学
〇グレードA(ISO 5)エリアとその周辺の部屋の空気の品質
〇施設レイアウト
〇(無菌作業の実施とサポートに使用される全ての部屋全体の)職員の流れと原材料の流れ
・汚染の危険のリスクアセスメントの結果に対処するためのタイムラインを含む詳細な改善計画
無菌処理操作の設計と制御に行われる具体的な有形の改善について説明せよ。
・施設および装置の定期的で慎重な運用の管理監督を実施するための貴社のCAPAの計画
この計画は、とりわけ、装置/施設の性能問題の迅速な検知、修理の効果的な実施、適切な予防保守スケジュールの遵守、装置/施設の
インフラストラクチャのタイムリな技術的改善、継続的なマネジメントレビュのためのシステムの改善を保証する必要がある。また、
貴社の計画は、会社のネットワーク全体で適切なアクションが実行されるようにする必要がある。
●指摘3
貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれている、または、表示されている同一性、濃度、品質、純度を持っていることを保証する
ために設計された製造と工程管理に関する適切に文書化された手順を制定することを怠った。(21 CFR 211.100(a))
<指摘3詳細>
錠剤圧縮の不合格判定は、主圧縮力の上限と下限を設定することによって行われる。貴社は“過去の製造経験”に基づいて不合格判定の
リミットと不合格率を設定したが、貴社には、米国で販売されている医薬品について、これらの不合格率が一貫して規格を満たす医薬品
の製造するために適切であることを保証するためのバリデーションデータが不足している。注目すべきは、貴社は少なくとも1回、溶出試験
の規格に不合格となった製品のロットについて苦情を受け取っており、これは主圧縮力値が高いことに起因している。
プロセスバリデーションは、ライフサイクル全体を通じて、工程の設計と管理状態の安定性を評価するものである。製造プロセスの各重要
なステップは適切に設計され、投入原材料、工程内材料、最終製品の品質を保証する必要がある。工程の適格性評価の検証には、初期の
管理状態が確立されていることを判断するためにロット内のばらつきの特性を明らかにしてロットを評価するよう、重要な工程の各段階
で集中的なモニタリングと試験をすることが含まれる。
商用の販売の前に工程の適格性評価の完了が必要である。その後、貴社が製品のライフサイクルを通して安定した製造作業を維持して
いることを保証するために、工程性能と製品品質の継続的で慎重な監視が必要である。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素とみなす一般原則とアプローチについて、FDAのガイダンス文書Process Validation:
General Principles and Practicesを見よ。
貴社は回答の中で、不良限界の検証によって裏付けされた主圧縮力のリミットを含めるようバッチレコードを改訂すると約束した。
貴社の回答は不十分である。貴社は回答に、主圧縮力の錠剤重量と比較する不良限界の検証プロトコルを含めた。この検証は範囲が
限定されていて、硬度を含む他のパラメータが測定または考慮されなかった理由に関する根拠が示されていない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクル全体にわたって管理状態を保証するための、関連する手順を添えた、貴社のバリデーションプログラムの詳細な
サマリ
工程性能適格性評価(PPQ)に関する貴社のプログラムと、継続的な管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの
継続的な監視のプログラムについて説明せよ。
・貴社の市販医薬品ごとの適切なPPQ実施のためのタイムライン
・工程性能プロトコルと、装置及び施設の適格性評価に関する文書化された手順
・継続的な管理状態を保証するための、ロット内及びロット間のばらつきの慎重なモニタリングを含む、貴社の各製造工程の設計、
バリデーション、維持、管理、モニタリングに関する詳細なプログラム
貴社の装置及び施設の適格性評価に関するプログラムも含めよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、貴社の作業を評価し貴社がCGMPの要件を満たすのを助けるために21 CFR 211.34
に記載された適格性のあるコンサルタントを雇う必要がある。適格性のあるコンサルタントは、貴社がFDAと共に貴社のコンプライ
アンス状態の解決を達成しようとする前に、CGMP遵守に関して貴社の全ての作業を対象に6つのシステム(※)の包括的な監査を
実施し、全てのCAPAの完了と効果を評価する必要がある。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続的にCGMP
遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
CGMPの21 CFR part210,211の要件を満たすために、品質システムとリスクマネジメントアプローチを実装する助けとして、FDAの
ガイダンス文書Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
※6つのシステム:品質システム、設備&装置システム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、試験管理システム
●データ・インテグリティ
査察中、我々査察官は、環境モニタリング記録を非同期(またはバックデート)で承認していると思われるラボの職員を確認した。最初の
質問で、職員は、貴社のデータの信頼性と真正性に関して重大な懸念を抱かせる、確認された行動を認め追認した。その後職員は、
日付を遡って記録していないと述べ、発言を撤回した。
完全で一貫性があり正確なデータは、帰属性、判読性、同時性のある記録で、原本または真正なコピーであり、正確である必要がある。
(ALCOA)
CGMP準拠のデータ・インテグリティの手順の確立と遵守に関し、FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With
Drug CGMPを見よ。
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、調査して違反の原因を判断し、再発や
その他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がなされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の
医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を
完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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本ウォーニングレターでは、環境モニタリングデータのバックデートの承認によるデータ・インテグリティの欠落が指摘されていました。
それにしても、こんなことを言うのもなんですが、査察中は普段以上に作業に注意を払うと思うのですが、そんな時にバックデートで
承認を行っている作業がみつかるというのは、一体どういうことなのだろうと不思議に思ってしまいます。
