政府が、OTC類似薬(※1)の一部を2026年度から公的医療保険の適用外とする方向で検討を始めることになったそうです。
背景には、増加する医療費の抑制と、国民のセルフメディケーションの推進(※2)があるようです。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf
薬事日報の以下のサイトに詳しい解説があります。
https://www.yakuji.co.jp/entry119841.html
薬事日報の記事も含めネットをいろいろ調べてみたところ、OTC類似薬が公的医療保険の適用外になった場合、確かに
医療費抑制効果やセルフメディケーション推進の効果が期待できる反面、以下のような懸念があるようです。
①保険適用外となることによる患者の負担増加
②患者が医療機関にかかることを控えることによる健康状態の悪化
③外来患者の減少による医療機関の収入減少
④医療機関の保険適用薬の処方増加
⑤製薬会社のOTC類似薬の売上減少
⑥OTC類似薬のOTC薬との価格競争の激化による製薬会社の利益減少
⑦薬局・ドラッグストアの健康相談・情報提供等の重要性の増加
■感想
OTC類似薬がOTC医薬品になったら、ドラッグストアは取り扱う医薬品が増えて大変なことになりそうです。
買う側も、今でさえ似た薬が所狭しと並んでいるのに、これ以上増えたら、結局ブランドや値段で決めることになり、
OTC医薬品は最終的には淘汰されていくかもしれません。
そうなると、製薬会社は売れないOTC医薬品の製造を中止することになり、多品種少量生産から解放されるかもしれません。
また、これまでジェネリック医薬品の使用を推奨してきた医療機関は、OTC類似薬の保険適用外化により、再び
先発医薬品の処方を増やすかもしれません。(必ずしもOTC類似薬=ジェネリック医薬品とは言えませんが)
薬価改定で先発医薬品の薬価逆転現象も起きているようなので、 先発医薬品の今後は気になるところです。
また、昨今、医療機関による低価値医療(※3)の提供の増加が言われていますが、保険適用薬が減ることで、
低価値医療の提供がしづらくなるというメリットがあるかもしれません。
現時点でどうなるかはわかりませんが、日本の財政状況を考えると実施される可能性は大きいので、今後の動向が
気になるところです。
※1 OTC類似薬
医療用医薬品として処方されるものの、市販のOTC医薬品と同様の有効成分・効能を持つ医薬品
※2 セルフメディケーションの効果
厚生労働省の、セルフケア・セルフメディケーション関する検討内容が確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001369161.pdf
※3 低価値医療
昨今、医療機関による効果の乏しい処方が提供されているケースがあるという調査結果が発表されています。
https://www.msn.com/ja-jp/health/other/%E7%A4%BE%E8%AA%AC-otc%E9%A1%9E%E4%BC%BC%E8%96%AC-%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E8%B2%A0%E6%8B%85%E5%A2%97%E3%81%AB%E9%85%8D%E6%85%AE%E3%82%92/ar-AA1HEykK?ocid=msedgntp&pc=LCTS&cvid=61ecc436e3e04666948da660835fe16e&ei=46