FDA:メキシコの企業に対するデータ・インテグリティの不備を含む指摘 (WL:320-26-78)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) がメキシコの製薬会社に対して発したデータ・インテグリティの不備の指摘を含む
ウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/laboratorios-jaloma-sa-de-cv-725939-05222026


********************* Warning Letter 320-26-78 概要 *********************
2025年12月15日~12月19日のFDAによるメキシコの医薬品製造所の査察において、医薬品製造に関するCGMP
違反がみつかり、2026年5月22日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、制定された規格と標準に従っていることを保証するために必要な全ての試験から得られた完全なデータを
含むラボの記録を保証することを怠った。 (21 CFR 211.194(a))
<指摘1詳細>
貴社は、OTC医薬品に使用される成分に関する微生物サンプリングおよび試験結果を正確に記録することを怠った。
貴社の試験記録は、実施された活動を正確に反映していなかった。例えば、貴社の微生物試験担当者は定期的な
サンプルXXの採取を記録していたが、質問を受けた後、実際にはサンプルを採取していなかったことを認めた。
さらに微生物試験担当者は、貴社の手順で規定されているXX時間ではなく、XX時間の培養の後にのみコロニー数の
カウントをしていたことを認めた。貴社は、我々査察官に対して、この容認できない慣行を認めた。貴社の行為は、貴社
の試験の管理における重大な欠陥を示していて、貴社のデータの完全性を損なうものである。
貴社は回答の中で、培養開始時刻と終了時刻の記入欄を追加するために培養ログブックを更新し、担当者に正式な
トレーニングを実施し、有効性を評価するために内部監査XXを実施すると述べている。
貴社のラボで生成された全てのデータの妥当性を判断するための回顧的なアセスメントが欠けているので、貴社の
回答は不十分である。さらに、貴社の回答は、CGMPデータの不正な改ざんや削除を可能にするシステム上の脆弱性
を特定するためのデータ・インテグリティの管理のギャップ分析を含んでいない。また貴社の経営陣がCGMPラボの
運用とデータ・インテグリティを適切に監督するのに適切な資格を有しているかどうかの評価も提出していない。
全ての試験結果とそれらに関連するパラメータの完全で正確なレコードを記録・保持していないことは、データの信頼
性を根本的に損なう。その結果、信頼性の低いデータにより、品質部門(QU)は適用される基準への準拠を保証する
責任を効果的に果たすことができない。
貴社の品質システムは、貴社の製造する医薬品の安全性、有効性、品質を裏付けるデータの正確性とインテグリティを
十分に保証していない。CGMPに準拠したデータ・インテグリティの実務を確立し遵守するためのガイダンスについて
は、FDAのガイダンス文書Data Integrity and Compliance With Drug CGMP : Questions and Answersを見よ。
我々は、貴社が、貴社の改善を手伝う独立した第三者で適格なコンサルタントを雇うことを強く勧める。この文書への
回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・データ記録及び報告における不正確な範囲の包括的な調査
 〇詳細な調査手順と方法論;アセスメントの対象となる全ての試験・製造作業・システムのサマリ、貴社が評価対象 
  から除外する作業部分がある場合はその理由
 〇不正確なデータの性質、範囲、根本原因を特定するための、現在及び以前の従業員のインタビュ
  我々は、これらのインタビュは、適格な第三者によって実施されることを勧める。
 〇貴社の施設におけるデータ・インテグリティの不備の範囲のアセスメント
  省略、変更、削除、記録の破壊、非同時の記録の完成、その他の不備を特定せよ。データ・インテグリティの欠落が
  発見された貴社施設の作業の全ての部分について説明せよ。
 〇試験及び製造におけるデータ・インテグリティの欠落の性質に関する包括的で回顧的な評価 
  我々は、潜在的な違反が特定された分野の専門知識を持った適格な第三者が、全てのデータ・インテグリティの
  欠如を評価することを勧める。
・見つかった不備が貴社の医薬品の品質に与える潜在的な影響の現在のリスクアセスメント
 貴社のアセスメントには、データ・インテグリティの欠如の影響を受けた医薬品のリリースにより引き起こされる
 患者へのリスクの分析と、継続的な作業により引き起こされるリスクの分析を含めるべきである。
・全体的な是正処置・予防処置の計画の記述を含む、貴社の経営戦略
 貴社の戦略には、以下の事を含む必要がある:
 〇分析データ、製造記録、FDAに提出される全てのデータを含む貴社で生成する全てのデータの信頼性と網羅性
  をいかに保証するつもりかについて述べた詳細な是正処置の計画
 〇現在のアクションプランの範囲と深さが、調査とリスクアセスメントで見つかったものに見合っているという
  エビデンスを含む、貴社のデータ・インテグリティの欠落の根本原因の包括的な記述
  データ・インテグリティの欠落の責任を持つ個人が、貴社のCGMP関連データまたは医薬品申請データに影響
  を与えることが出来る状態のままかどうかを示せ。
 〇顧客への通知、製品回収、追加試験の実施、安定性を保証するために貴社の安定性プログラムへのロットの
  追加、医薬品申請アクション、苦情のモニタリングの強化等、患者を守り、医薬品の品質を保証するために貴社
  がとった、またはとろうとしている暫定的な手段
 〇貴社のデータのインテグリティを保証するために設計された、手順、プロセス、方法、管理、システム、管理監督、
  人的資源(例:トレーニング、職員の改善)に対する改善の取り組みと強化について述べた長期的な手段
 〇貴社がデータ・インテグリティの改善のプロトコルを実行した後、是正処置・予防処置(CAPA)の効果を評価する
  助けをするために少なくとも2年間、広範囲な年次照査を実施する適格なコンサルタントを雇うというコミット
  メント
 〇データ・インテグリティの懸念を報告する従業員から匿名の苦情を受け取る権限を持ち、潜在的な違反が発生
  した場合には必要に応じて外部機関からの専門知識と共に、独立した品質保証の機能による迅速に調査を保証
  する最高データ責任者(Chief Integrity Officer)を雇う場合はFDAに通知せよ。
 〇すでに進行中または完了した上記活動に関するステイタス・レポート
●指摘2

貴社は、成分、医薬品容器、蓋、工程内原料、ラベル、医薬品の製品が同一性、濃度、品質、純度の適切な標準に準拠
していることを保証するために設計された、科学的に理にかなって適切な規格、標準、サンプリング計画、試験手順を
含むラボの管理を確立することを怠った。(21 CFR 211.160(b))
<指摘2詳細>
貴社は医薬品の製品を試験するのに使用される米国薬局方(USP)試験法の代替の微生物試験法が、USPと同等か
それ以上であることを保証するために適切なバリデーションを実施することを怠った。
具体的には、貴社がXXの微生物分析に使用するXX法に不備があった。XXの試験範囲は、XXに限定されていて、
嫌気性細菌、総酵母菌数とカビ、または、XXの試験が含まれていなかった。さらに、貴社の手順書で指定されている
培養時間は、微生物測定に関してUSP<61>で規定されている仕様と一致していなかった。さらに査察中、貴社は貴社
の微生物試験法はバリデートされていないと述べた。
貴社は回答の中で、XXのサンプルの分析にXX法を使用することを中止し、手順書を改訂したと述べている。また貴社
は、改訂されたXXのサンプルの分析のための微生物試験法と職員のトレーニング記録も提出した。
貴社は、貴社の改訂された試験法をバリデートしたというエビデンスを提供していないし、USPのXX章に記載されて
いる方法と同等かそれ以上であることも示していないので、貴社の回答は不十分である。加えて、全ての微生物試験
法が適切にバリデートまたは検証され使用に適していることを保証するための包括的な評価に欠けている。さらに、
貴社の回答は、貴社が基準を満たさない試験法で分析された成分を使用して製造した医薬品の包括的な評価を提供
していない。
試験法は、意図した用途に適していて、再現性があり、USP公定法と同等かまたはそれ以上で、各成分または最終
製品内の好ましくない微生物の存在を検出できることを示すためにバリデートされている必要がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のラボの実務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力に関する包括的で独立したアセスメント
 このレビュに基づき、貴社のラボのシステムを改善し有効性を評価するための詳細な計画を提出せよ。
・製造工程にリリースする前に貴社の成分の各ロットを分析するために使用される、試験法を含む、化学及び微生物
学的規格のリスト
 貴社が使用する試験法が適切に検証(USP)またはバリデートされ、USPモノグラフ法(非USP)と同等またはそれ
 以上であることを示す比較分析を提出せよ。
・USP公定法と同等またはそれ以上で、意図した用途に適していることを示す、増殖促進試験を含む、貴社の微生物
学的試験法のバリデーション
●指摘3
貴社は、製造指図書原本及びその他の記録の変更を権限のある職員のみが行うことを保証するためにコンピュータ
または関連システムに対する適切な管理を怠った。 (21 CFR 211.68(b))
<指摘3詳細>
貴社は、貴社の最終製品内の成分を試験するために使用される使用するガスクロマトグラフィ(GC)の装置に対する
適切な管理を欠いていた。貴社のGC試験装置は、制御ソフトウエアのバリデーションや監査証跡の有効化が行われ
ていなかったため、適切に適格性評価がされていなかった。また、GCデータファイルの作成日と更新日も正確では
なかった。
さらに貴社には、貴社のラボの電子生データの削除や改ざんを防止するための適切な管理がなかった。査察中、我々
査察官は貴社のGCコンピュータの保存フォルダ内に置かれていない複数のクロマトグラフのデータファイルを確認
した。貴社は、貴社がGCコンピュータに保存されている電子データのバックアップを行っていなかったことを認めた。
貴社は回答の中で、GCのソフトウエアパッケージを購入したことと、GCシステムのバリデーションを実施する予定で
あると述べている。また貴社は、コンピュータシステムとソフトウエアのデータ管理を強化し、監査証跡を有効化し、
電子データを定期的にバックアップすることを約束している。
貴社の回答には、貴社のGCコンピュータから破棄または失われたクロマトグラフィデータの包括的な影響評価が
含まれていないので、貴社の回答は不十分である。貴社の回答は、タイムスタンプが不正確で監査証跡データが欠落
しているCGMPの電子データのトレーサビリティをいかに保証するかについて説明していない。さらに貴社は、貴社の
GCバリデーション及び適格性評価の活動完了のタイムラインを提供していない。この文書への回答の中で、以下の
情報を提供せよ:
・コンピュータシステムのセキュリティをインテグリティに関する包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
 設計と管理の脆弱性を特定し、貴社のラボ及び製造用の各コンピュータシステムの適切な改善の情報を提供する
 レポートを提出し、以下の要素について説明せよ:
 〇貴社のラボにある、スタンドアロン及びネットワーク式の全ての装置を含むハードウエアのリスト
 〇全てのソフトウエアの構成設定(装置のソフトウエアとLIMSの両方)とそのバージョン、全てのユーザの権限の
  詳細と貴社のコンピュータ化システムの監督責任に関するリスト
  ユーザの権限については、ラボ及び製造用コンピュータシステムへのアクセス権限を持つ全ての職員について、
  ユーザの役割と関連する権限(管理者権限を持つユーザに許可される具体的な権限を含む)を明記せよ。また、
  いかに、職員に管理者権限やその他のデータの保持または信頼性を損なう可能性のある権限が付与されない
  ように保証するかについても説明せよ。
 〇これに限定されないが、固有のユーザ名/パスワードが常に使用され、その機密性が保護されているかなどを
  含むシステムのセキュリティ対策
 〇 監査証跡データの確実な使用とレビュに関する詳細な手順と、貴社の各システムにおける監査証跡の実装状況
 〇スタンドアロンの装置(例:天秤、pH計、XX含有量の試験装置)から電子システムを通じて生成されるデータの
  統合を強化するための技術的な改善
 〇これに限定されないが、不正アクセスを防止し、適切なユーザの役割の割り当てを保証するためのシステムの
  セキュリティ管理、全ての分析の二次レビュ、その他のシステムの管理を含む、貴社の手順の改訂と関連する
  トレーニングの詳細な概要
●指摘4
貴社の品質管理部門は、貴社で製造された医薬品がCGMPに準拠し、同一性、濃度、品質、純度に関して制定された
規格を満たすことを保証する責任を果たすことを怠った。(21 CFR 211.22)
<指摘4詳細>
貴社のQUは、管理状態と全ての品質基準への準拠を保証するための貴社OTC医薬品製造作業の適切な監督と管理
が欠けていた。
この文書における重大な指摘事項は、貴社がCGMPに準拠した効果的な品質システムを運用していないことを示して
いる。貴社の製造及び試験作業の効果的な管理監督の欠如に加え、我々は、貴社のQUが適切な権限の行使が出来
ていない、または/かつ、その責任を十分に果たしていないことを確認した。経営陣は、貴社のシステム、プロセス、製品
がFDAの要件に適合していることを確認するために貴社の全体的な製造作業を直ちに包括的に評価する必要が
ある。
貴社の品質システムは不十分である。CGMPの規制21 CFR parts 210, 211の要件を満たすための品質システムと
リスクマネジメントアプローチの実装の助けとして、FDAのガイダンス文書
ICH Q10 Pharmaceutical Quality System, and Quality Systems Approach to Pharmaceutical CGMP Regulations
を見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社のQUが効果的に機能するための権限とリソースを与えられていることを保証するための包括的なアセスメント
と改善計画
 アセスメントには、これに限らないが、以下のことも含む必要がある:
 〇貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
 〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査及びその他全てのQUの職務遂行の監督と承認
 〇また、これに限らないが、発生した製造/品質の問題に積極的に対処し継続的な管理状態を保証するための
  リソースのタイムリな提供を含む、経営陣の品質保証と信頼性の高い作業のサポート方法についても説明せよ。
・文書化が不十分な箇所を特定するための、貴社のラボの作業全体で使用されている文書化手順の包括的で独立
したアセスメント
貴社が、帰属可能、判読可能、網羅性・原本性があり、正確で、同時性のある記録を保持していることを保証するため
に、貴社の文書化手順を包括的に改善する詳細なCAPAの計画を含めよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、貴社の作業を評価し、貴社のCGMPの要件を満たすのを助け
るために21 CFR 211.34に記載された適格なコンサルタントを雇うべきである。適格なコンサルタントは、貴社が
FDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、CGMP遵守に関する6つのシステム(※)の
包括的な監査も実施し、是正処置・予防処置の完了と効果を評価する必要がある。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、
継続的にCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
※6つのシステム:品質システム、設備&装置システム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、
試験管理システム
●米国での販売用に製造された化粧品
省略
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、調査して違反の原因を
判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
FDAは2026年4月23日に貴社から米国に輸入するために提供される全ての医薬品及び医薬品製品に対し輸入警告
措置66-40を発した。FDAは、貴社のOTC医薬品のサンプリング結果の違反により、2020年8月3日に貴社を輸入
警告措置66-78の対象としていた。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDA
は貴社の医薬品製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に
対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
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今回はメキシコの企業に対するウォーニングレターでしたが、指摘3にて各システムの監査証跡の実装状況の提出を
求めているところを見ると、メキシコの製薬会社のコンピュータシステムも、監査証跡機能の完備はできていないこと
が読み取れます。
昨今、データ・インテグリティの観点から監査証跡の実装が強く求められていますが、日本はもちろんのこと、米国を
含む各国でまだまだ対応中なのだということがわかります。

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