EU GMPガイドラインAnnex22(人工知能)の検討動向

欧州医薬品庁(EMA)は2026年6月30日~7月1日にEU GMPガイドラインAnnex22(人工知能)策定のために、専門家
の意見とエビデンスを収集することを目的としたワークショップを開催しました。そして6月30日の公開セッションの
報告書Multistakeholder workshop on expert contributions to artificial intelligence guidance development
(Annex 22)が2026年10月2日に発表されました。
出典:report-multistakeholder-workshop-expert-contributions-artificial-intelligence-guidance-development-annex-22_en.pdf

もともとAnnex22は、策定にむけてEC(欧州委員会)により2025年7月7日~10月7日にドラフト版に対するパブリック
コメントが募集されていました。
ドラフト版では、静的AIモデルの運用を想定しており、同一の入力を与えた場合に同一の出力を提供しない可能性が
ある確率的出力を持つモデル、生成AI、大規模言語モデル(LLM)は、重要なGMPアプリケーションでは使用すべき
でないとされていましたが、ステークホルダーの協議の中で、生成AIやLLM等の利用可能性について支持が示され、
専門家の意見を求めるために本ワークショップが開催されました。

報告書は15ページあるため、序論と結論をまとめました。
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●序論
EU GMPガイドラインAnnex22(人工知能)は、AIモデルが組み込まれたコンピュータ化システムについて、既存の
Annex11(コンピュータ化システム)を補完する追加ガイダンスとして作成される予定である。
Annex22のドラフトでは、重要なGMPアプリケーションに以下のモデルは使用すべきでないとされていた。
・生成AI
・大規模言語モデル(LLM)
・確率的出力を持つモデル(確率的モデル)
・動的モデル
・性能を適応させるモデル(適応型モデル)
しかしAnnex22のパブリックコンサルテーションでは、製造業者がGMPアプリケーションにおいて重要度に関わらず
LLMや生成AIの使用を認めることを支持していて、これは製薬業者のイノベーションを支援し投資を促進する必要性
を示していた。
これを受けて、Annex22起草グループは、AIの種類だけを理由に排除するのではなくリスクベースのアプローチに
より使用可能かを検討している。
本ワークショップでは、特にICH Q9品質リスクマネジメント(QRM)を軸として、以下の6テーマについて、製品品質と
患者の安全を確保しつつ、AIイノベーションを可能にする、リスクに見合った実装可能なAnnex22を開発するために、
業界関係団体から意見を集めた。
<テーマ>
・GMPにおける適応型/確率的AIモデルの規制の道筋
・技術的信頼性とインシデント対応
・人的監視と説明責任
・バリデーションとライフサイクル管理
・戦略的リスクとコンプライアンス上の制限
・サイバーセキュリティとアウトソーシング活動

●結論
参加者は、適応型モデル、確率型モデル、生成AIの課題を認識しつつも、AIアプリケーションの許容性は、基盤となる
技術そのものではなく、リスクベースの技術的に中立なアプローチを推奨し、意図した用途、それがもたらすリスク、
ライフサイクル全体を通して適用される制御の有効性によって決定されるべきであると主張した。
全てのセッションを通して、以下のことを含むいくつかの重要な共通テーマが浮かび上がった。
・文書化された意図した用途
・堅牢な品質リスクマネジメント
・ライフサイクルを通したバリデーションとモニタリング
・リスクに見合った人的監視
・効果的な制御メカニズム
・明確な説明責任
・サプライヤ監視
・実証可能な制御状態の維持
参加者は、GMP規制対象活動で使用されるAIシステムを評価する際には、不確実性、複雑性、モデルの影響、および
検出可能性が重要な考慮事項であることも強調した。
議論ではさらに、既存のGMP原則、特に品質リスクマネジメント、バリデーション、ライフサイクル管理、監督、および
アウトソーシング活動に関する原則は、AIシステムにも関連性があり適用可能であることが示された。
全体として、本ワークショップは、AIシステムのガバナンス、制御、検証、および監視に関して、業界から体系的かつ
経験に基づいた意見を収集するという目的を達成し、起草グループにAnnex22の改訂を支援するための知見を提供
した。
議論の結果、適切な管理と強固なリスクベースのフレームワークを前提とすれば、適応型モデル、確率型モデル、生成
AI技術をGMP規制対象アプリケーションで使用するための実現可能な道筋が存在する可能性があり
、同時に製品の
品質と患者の安全性を引き続き保護できることが示唆された。
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本ワークショップで、LLM/生成AI/適応型モデル/確率型モデルといった技術カテゴリでAIを一律排除するという
従来の発想から、意図した用途とリスクに応じてAIの使用を検討すべきという方向に進んだ点が、非常に興味深い
です。
余談ですが、このワークショップは、AIの暴走に関する様々な報道がなされる前の2026年6月30日~7月1日に開催
され、AIを一律排除するのではなく活用する方向に向かいましたが、もしワークショップがもう少し後に開催されて
いたら、結果は違ったものになっていたかもしれません。

Annex22とAnnex11やGMPガイドラインPart1 Chapter4との関係については、以下の内容が見られました。
 ◎テーマ:GMPにおける適応型/確率的AIモデルの規制の道筋 のセッション内 
  Annex22では詳細な技術的規定を避け、Annex11、Chapter4、ICHガイドラインとの整合性を維持すべきで
  ある。
 ◎テーマ:サイバーセキュリティとアウトソーシング活動 のセッション内
  AIシステムはコンピュータ化システムなので、Annex11ドラフトの7章(供給者とサービス管理)は原則レベルで
  適用可能である。Annex22には、重複を避けてAnnex11を参照しつつAI固有の事項が追加される可能性がある。

Annex11とAnnex22で整合性がとれない事態は避けられそうですが、今後発出が予定されるAnnex11の内容も
含め、Annex22制定の動きには注意が必要だと思います。

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