今回は、米国食品医薬品局(FDA) がドイツの製薬会社に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/thomas-brunner-hygiene-gmbh-729018-07242026
******************** Warning Letter 320-26-106 概要 ********************
FDAは、FD&C Act 704(a)(4)に基づきドイツのOTC医薬品の製造業者に記録の要求を行い、提出された記録を
レビュして、2026年7月24日付で以下の内容のウォーニングレターを出しました。
●指摘1
貴社は、出荷前に、医薬品の各ロットについて、各有効成分の同一性、濃度を含む、最終規格への十分な適合性に
ついて、適切な試験の判断を行うことを怠った。(21 CFR 211.165(a))
<指摘1詳細>
貴社が提出した記録及び情報は、貴社が貴社の最終医薬品の出荷及び販売前に十分に試験していることを示して
いなかった。例えば貴社が提出した文書は、貴社の最終医薬品に含まれる有効成分の含有量の定量試験を含んで
いなかった。
貴社が製造した医薬品が、意図した用途に適し、予め定められた全ての品質特性に適合していることを保証する
ために、試験はCGMPの不可欠な要素である。医薬品は、リリース及び販売前に、有効成分の同一性と濃度について
試験されなければならない。適切な試験が行われなければ、貴社には出荷前に貴社の医薬品が適切な規格に適合
していることを保証する科学的エビデンスがない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・ロットの処遇を判断する前に医薬品の各ロットを分析するために使用される試験方法を含む、化学及び微生物学的
な規格のリスト
・この文書の日付時点で使用期限内にある米国向けに出荷された医薬品の全てのロットの品質を判断するために、
保管しているサンプルの完全な化学及び微生物学的試験を実施するためのアクションプランとタイムライン
・各ロットの保管しているサンプルの試験で得られた全ての結果のサマリ
もし試験で、品質基準を満たさない医薬品が発見された場合は、顧客への通知や製品回収の開始等、迅速な是正
処置を講じること。
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
このレビュに基づき、貴社の試験システムを改善し有効性を評価するための詳細な計画を提出せよ。
●指摘2
貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたう、または、表示された同一性、濃度、品質、純度を持つことを
保証するために設計された適切な文書化された製造手順と工程管理を確立することを怠った。また貴社は、装置の
洗浄およびメンテナンスに関する適切に文書化された手順を制定し、それに従うことを怠った。
(21 CFR 211.100(a), 211.67(b))
<指摘2詳細>
貴社から提出された記録及び情報に基づくと、貴社は、貴社の製造工程と洗浄手順を適切にバリデートしていたこと
を証明していなかった。
〇適切なプロセスバリデーションの欠如
貴社は適切なプロセスバリデーションが不足している。貴社は、貴社の医薬品製造手順の再現性を保証するために
適切な管理と重要なパラメータが適用されていることを示す十分なデータの提供を怠った。貴社の回答では、“最終
検査結果が満足できるものであれば”プロセスは適切であると考え、それ以上のバリデーション活動を実施して
いないと述べていた。さらに、貴社の回答の中の試験報告書は、有効成分の含有量の定量試験を含んでいなかった。
プロセスバリデーションは、プロセスのライフサイクル全体を通して、設計の妥当性と管理状態を評価するもので
ある。製造プロセスの重要な各段階は適切に設計され、投入原材料、工程内原料、最終製品の品質を保証する必要が
ある。工程の適格性評価の検証は、ロット内のばらつきの特性を示し、初期の管理状態が確立しているかを判断する
ためにロットを評価するための、各重要な工程の段階での集中的なモニタリングと試験の実施を含む。
製品の商用の販売前に、工程の適格性評価の合格が不可欠である。その後、貴社が製品のライフサイクルを通して
安定した製造作業を維持していることを保証するために、工程の性能と製品品質に対する継続的で厳格な管理が
必要である。
FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般的な原則とアプローチに関しては、FDAのガイダンス文書
Process Validation : General Principles and Practicesを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
〇適切な洗浄バリデーションの欠如
貴社が提出した記録及び情報は、貴社が非専用製造装置の洗浄に関する適切でバリデートされた手順を確立して
いることを示していなかった。洗浄バリデーションは具体的で再現可能な洗浄手順なしには実施できない。
非専用製造装置の表面からの有効成分や製品残留物の不十分な除去は、その装置で後から製造される医薬品の
汚染につながる可能性がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクルを通して管理状態を保証する貴社のバリデーションプログラムの詳細なサマリと関連する手順
工程性能適格性評価(PPQ)と、継続した管理状態を保証するためのロット内及びロット間のばらつきの継続的な
監視に関する貴社のプログラムについて述べよ。
・販売されている各医薬品のPPQ実施のためのタイムライン
さらに、プロセスバリデーションを実施せずに製造され販売された医薬品について、リスクアセスメントと講じる
べきフォローアップ措置を提出せよ。
・貴社の医薬品の製造作業におけるワーストケースとして特定された条件を取り入れることに特に重点を置いた洗浄
バリデーションプログラムへの適切な改善
条件は、これに限定されないが、以下の全てのワーストケースの特定と評価を含むべきである:
〇より高い毒性を持つ医薬品
〇より高い有効性を持つ医薬品
〇洗浄溶液の中でより低い溶解度の医薬品
〇洗浄を難しくする特性を持った医薬品
〇洗浄を最も難しくする拭き取り場所
〇洗浄前の最大保持時間
さらに、新しい製造装置や新しい製品を導入する前に、貴社の変更管理システムでとられるべき手順を述べよ。
・製品、工程、装置の洗浄手順の検証とバリデーションのための適切なプログラムが実施されていることを保証する
最新のSOPのサマリ
●指摘3
貴社は、同一性と、純度・濃度・品質に関する全ての適切な文書化された規格への適合について、各成分のサンプル
を試験することを怠った。(21 CFR 211.84(d)(1), 211.84(d)(2))
<指摘3詳細>
貴社が提出した記録及び情報は、貴社が、貴社の医薬品を製造するために使用される原材料を適切に試験している
ことを示していなかった。
〇ハイリスクの医薬品成分を含む製品
貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用される、グリセリンなどの入荷した成分の同一性を試験することを
怠った。グリセリンやその他の特定のハイリスクの医薬品成分に関する同一性試験には、ジエチレングリコー(DEG)
やエチレングリコール(EG)の含有量に関する安全基準値を満たすことを保証するための、米国薬局方(USP)の限度
試験が含まれる。貴社は、これらの有害な不純物を検出するUSP同一性試験を使って各ロットの各出荷毎の適切な
同一性試験を実施していなかったので、貴社は貴社の医薬品の製造に使用するためのこれらの成分の許容性を保証
することを怠った。
DEGまたはEGで汚染された成分の使用は世界中の人々に様々な致命的な中毒事件を引き起こしてきた。DEGまた
はEGの汚染のリスクが高い成分を含む医薬品を製造する際のCGMPの要件を満たす助けとして、FDAのガイダンス
文書Testing of Glycerin, Propylene Glycol, Maltitol Solution, Hydrogenated Starch Hydrolysate, Sorbitol
Solution, and Other High-Risk Drug Components for Diethylene Glycol and Ethylene Glycolを見よ。
〇成分として水を含む製品
貴社は、貴社の医薬品の成分として使用される水が使用に適していて、USPのXX水のモノグラフを満たしていること
を証明していなかった。例えば、貴社は、貴社の医薬品を製造するために使用された水の導電率及び全有機炭素試験
を実施したエビデンスを提出することを怠った。
水は貴社の医薬品の成分である。XX水は、その用途に適していて、適切な化学及び微生物学的な特性への継続的な
適合を保証するために定期的に試験される必要がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・この文書の日付から30暦日以内に、医薬品の製造に使用されるハイリスクの医薬品成分の全てのロットの保管品の
試験から得られたDEGとEGの試験結果を提出するという約束
あるいは、成分のロットの保管品が入手できない場合は、関連する全ての最終医薬品のロットについて、DEGとEG
の存在について、保管サンプルの試験を実施せよ。
・使用期限内にあって、DEGまたはEGの汚染のリスクがある成分(これに限らないが、グリセリンを含む)を含む医薬
品の完全なリスクアセスメント
DEGまたはEGを含む可能性のある成分の全てのロットと関連する医薬品の安全性を判断するために、顧客への
通知や汚染されたロットの製品回収を含む、迅速で適切な措置を講じよ。これに限定されないが、入荷した原材料
の全てのロットが完全な適格性を有する製造業者からのもので、安全でない不純物を含まないことを保証すること
を含む、今後のサプライチェインを保護する追加の適切な是正処置・予防処置(CAPA)を特定せよ。この文書への
回答の中でこれらのアクションを詳しく説明せよ。
・各成分のロットの同一性、濃度、品質、純度に関する全ての適切な規格への適合性についていかに試験するつもり
かの記述
もし貴社が、濃度、品質、純度に関し、成分の各ロットについて試験する代わりに、供給者の試験成績書(COA)から
得た結果を受け入れるつもりであれば、初期のバリデーションと定期的な再バリデーションを通じて、供給者の
試験結果の信頼性をいかに確実に検証するかについて明記せよ。さらに、入荷した成分の各ロットについて少なく
とも1つの特定の同一性試験を常に実施するという約束を含めよ。グリセリン、プロピレングリコール及びその他の
ハイリスクの成分については、この試験には、USPモノグラフのパートA, B, Cの実施が含まれることに注意せよ。
・貴社で製造される医薬品の各ロットへの使用の許容性を保証するための、貴社の水の定期的な微生物試験を規定
した水システムのモニタリングに関する手順
・貴社のXX水システムに使用されている総菌数及び有害微生物に関する現在のアクション/アラートリミット
・システムが一貫して、XX水とUSPモノグラフの規格、適切な微生物限度を満たす水を製造することを保証するよう
な、継続的な管理、メンテナンス、モニタリングに関するプログラムを規定した手順書
・成分、容器、蓋の全ての供給者が適格性を評価されていて、原材料には適切なデータに基づいて適切な使用期限や
リテスト日が付与されているかどうかを判断するための貴社の原材料システムの包括的で独立したレビュ
レビュでは、入荷した原材料の管理が、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐために適切かどうかも判断する必要が
ある。
・ベンダの適格性評価プログラムを改善し、不適切な成分、容器、蓋の使用を防ぐための、徹底的なレビュに基づいた
貴社のシステムのCAPAのサマリ
・製造に使用するための適合性を判断するために、ハイリスクの医薬品成分の入荷した各ロットの試験に貴社が使用
している化学及び微生物学的品質管理の規格
・成分と貴社が製造する医薬品を試験する契約施設の適格性評価と監督に関する貴社のプログラムのサマリ
●指摘4
貴社は、医薬品の安定性の特性を評価するために設計し文書化された試験プログラムを制定し、それに従うことを
怠った。(21 CFR 211.166(a))
<指摘4詳細>
貴社が提出した記録及び情報は、貴社の医薬品の化学及び微生物学的特性が、ラベルに記載された有効期間XXを
通じて許容可能な範囲にあることを示していなかった。例えば、貴社が提出した安定性データには、摂氏XX℃で実施
されたXX試験と、摂氏XX℃で実施されたXX試験の結果のみが含まれている。さらに、試験方法は安定性を示して
いるものではないように見える。
適切な安定性の検証がなければ、貴社の医薬品が制定された規格を満たし、ラベルに表示された使用期間を通じて
品質特性を維持することを裏付ける科学的なエビデンスがない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の安定性プログラムの適切性を保証するための包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
貴社の改善プログラムには、これに限らないが、以下の事を含む必要がある:
〇安定性を示す方法
〇出荷許可前の、販売される密閉容器内の各医薬品の安定性の検証
〇うたわれている使用期限が妥当かどうか判断するための、各製品の代表的なロットが毎年安定性プログラムに
追加されるような継続的なプログラム
〇製品の使用期間中に変化する可能性のある全ての品質特性を網羅するプログラムの一環として各ステーション
(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
〇貴社の改善された安定性プログラムの、これら及びその他の要素を述べた全ての手順
●未承認新薬の違反
<省略>
●不正商標表示の違反
<省略>
●コンサルタント
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、CGMPの要件を満たすために貴社を助けるために21 CFR
211.34に規定された適格性が評価されたコンサルタントを雇うべきである。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、
継続的なCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
●品質システム
貴社の品質システムは不十分である、CGMPの規制である 21 CFR parts210, 211の要件を満たすための品質
システムとリスクマネジメントアプローチの実装の助けとして、FDAのガイダンス文書Quality Systems Approach to
Pharmaceutical CGMP Regulationsを見よ。
●結論
貴社には、違反を調査して根本原因を判断し、これらの違反及びその他の違反の発生を防止するために将来にわたっ
て根本的なコンプライアンスを保証するための是正処置・予防処置を実施する責任がある。
全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての
新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを
確認するために再査察を行うかもしれない。
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今回は、珍しくドイツの企業に対するウォーニングレターでした。
アジアの企業に対するウォーニングレターが圧倒的に多いため、アジアとヨーロッパのGMP遵守レベルには大きな
差があるのではないかという気がしてしまいますが、今回のようなウォーニングレターを見ると、必ずしもそうではない
ということがわかり、興味深いです。
