FDA:中国の企業に対する指摘 (WL:320-26-110)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) が中国の製薬会社に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/tianjin-kilo-pharmaceutical-sci-tech-co-ltd-731761-08062026

********************* Warning Letter 320-26-110 概要 ********************
FDAは、FD&C Act 704(a)(4)に基づき中国の原薬製造業者から提出された記録をレビュし、2026年8月6日付で
以下の内容のウォーニングレターを出しました。
●指摘1
予め定められた品質特性を満たす原薬を再現可能に製造できることの証明の不履行
<指摘1詳細>
704(a)(4)に基づく記録及びその他の情報に関する開示要求に対する貴社の回答は、貴社が、原薬の品質と純度を
保証するために不可欠な適切なプロセスバリデーションを実施せずに原薬XXを製造し米国向けに販売したことを
示している。例えば、2025年7月7日の我々の開示要求に対して貴社が提供した米国市場向けの全ての原薬に関する
プロセスパリデーションのサマリ―レポートの中で、貴社はこれらの原薬がまだ開発段階で、市販製品でなかったと
回答した。そのため、標準操作手順書のような正式な文書は完成していなかった。しかしFDAのデータは、貴社の原薬
XXは503A調剤薬局に販売されていたことを示している。
プロセスバリデーションは、ライフサイクル全体を通して、プロセスの設計の妥当性と管理状態を評価するもので
ある。製造プロセスの各重要な段階は適切に設計され、投入原材料、中間製品、最終製品の品質を保証する必要が
ある。プロセスの適格性評価の検証は、初期の管理状態が確立されているかを判断する。
適切なプロセスバリデーションを実施しなければ、貴社には、規格を満たす製品を再現が可能なかたちで提供できる
という基本的な保証に欠けている。FDAがプロセスバリデーションの適切な要素と考える一般的な原則とアプローチ
について、FDAのガイダンス文書Process Validation: General Principles and Practicesを見よ。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・製品のライフサイクル全体を通して管理状態を保証するための貴社のバリデーションプログラムの詳細なサマリと
関連する手順
 継続的な管理状態を保証するための、プロセスの性能適格性評価(PPQ)に関する貴社のプログラムと、ロット内
 及びロット間のばらつきの継続的なモニタリングについて説明せよ。
・販売中の各製品のPPQの実施に関するタイムライン
・装置と施設のプロセス性能のプロトコルと適格性評価に関する文書化された手順
・最初のプロセスバリデーションを実施せずに製造し販売した原薬に関するリスクアセスメントと講じるべきフォロー
アップ処置
●指摘2

製造指図記録書原本の作成と使用の不履行
<指摘2詳細>
XXのバッチレコードは、一貫した製造と製品品質を保証するために必要な重要なプロセス情報の一部が欠けて
いた。例えば、貴社は、XX及び製造工程で使用される主要な装置を表記していなかった。
貴社はXXに関するバッチレコードについて、複数回提出を求められたにも関わらず、提供しなかった。
適切なバッチレコードがなければ、製造工程が管理状態を維持していることを保証するためにロット内及びロット間
の両方を適切に監視・分析することができない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の全ての原薬に使用されている製造工程の設計・管理・監視・文書作成の適切性の包括的で独立した全体的な
レビュ
・貴社の各原薬の全ての重要な製造工程を網羅した、適切に詳細化されている製造指図記録の原本
●指摘3
分析方法の適合性のバリデーションと検証の不履行
<指摘3詳細>
貴社が提供した記録と情報によれば、貴社は、米国に販売された医薬品に使用される各試験方法について、試験方法
のバリデーション(または、もし公定書の試験が使用されている場合は検証)の実施を怠った。
試験方法は、意図した用途に適していることを示すためにバリデートされるか、少なくとも米国薬局方(USP)の公定法
と同等であることを示すために検証される必要がある。方法のバリデーションと検証は、医薬品の同一性、濃度、
品質、純度、効能の信頼できる判断を裏付けるために不可欠である。方法の妥当性を評価しなければ、貴社は、顧客に
提供されたデータが医薬品の品質と安全性を正確に反映しているという基本的な保証に欠ける。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の試験の業務、手順、方法、装置、文書作成、分析者の能力の包括的で独立したアセスメント
 このレビュに基づき、貴社の試験システムの有効性を改善し評価するための詳細な計画を提出せよ。
・ロットの処遇の判断について判断をする前に貴社の原薬の各ロットを分析するために使用される化学及び微生物
学的試験方法と規格のリストと、関連する文書化された手順
●指摘4
原薬の安定性特性を監視し、適切な保管条件とリテスト日及び使用期限を確認するためにその結果を使用するため
の、文書化された継続的な安定性試験プロブラムの設計の不履行
<指摘4詳細>
貴社が提供した記録と情報によれば、貴社は、貴社の原薬の品質特性がラベルに表示された使用期間を通して許容
可能な状態のままであることを証明するための定期的な安定性試験を実施することを怠った。例えば、貴社は貴社の
施設で製造されたXXに関する安定性試験のデータを提出しなかった。
適切な安定性プログラムがなければ、貴社は、貴社の原薬が制定された規格を満たし、ラベルに記載された使用期間
を通して品質特性を維持することを裏付けるための適切な科学的エビデンスに欠けている。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・販売された貴社の原薬がどのように有効期間を通して安定性の規格を満たすことを保証するかを示す回顧的な
リスクアセスメント
・貴社の安定性プログラムの適格性を保証するための包括的で独立したアセスメントと是正処置・予防処置(CAPA)
の計画
 貴社の改善されたプログラムは、これに限定されないが、以下のことを含む必要がある:
 〇安定性を示す方法
 〇出荷許可前の、販売される密閉容器内の各原薬の安定性の検証
 〇うたわれている使用期限が妥当かどうか判断するための、各製品の代表的なロットが毎年安定性プログラムに
  追加されるような継続的なプログラム
 〇各ステーション(タイムポイント)で試験される具体的な属性の詳細な定義
 〇貴社の改善された安定性プログラムの、これら及びその他の要素を述べた全ての手順
●医薬品リスト登録違反
FD&C Act 510(j)と21 CFR Part 207は、医薬品のリスト登録要件を定めている。FD&C Act 510(j)と21 CFR
207.41は、登録者に対し、商業流通のために製造する医薬品をリストに登録することを義務付けている。貴社は、
貴社のラベルコードで臭化デメカリウムおよびクロラムブシルの医薬品リスト情報を提供していなかったが、これらの
医薬品を製造し米国に出荷した。これらの医薬品はFDAの医薬品リストデータベースに登録されていたが貴社のもの
ではなく別の会社のラベルコードで登録されている。これらの医薬品を米国商取引に流通させる製造業者として、
21 CFR 207.41に従い、自社のラベルコードでリスト登録する必要がある。
FD&C Act 510(j)と21 U.S.C.360(j)に従った医薬品リスト登録の不履行は、FD&C Act 301(p)と21 U.S.C.331(p)
により禁止されている。さらに、502(o)のもとでは、510(j)で求められているリストに含まれていない場合、表示違反と
みなされる。301(a)のもとで、表示違反のある医薬品を州際通商に導入すること、または、導入のために引き渡すこと
は禁止されている。
完全で正確で最新の施設登録情報および医薬品リスト情報は、患者の安全を促進し保護するために不可欠である。
FDAは、医薬品製造施設の査察、サプライチェインのセキュリティ、市販後の監視を含むいくつかの重要なプログラム
において、施設登録情報および医薬品リスト情報を活用している。施設登録情報および医薬品リスト情報は、FDA
以外でも、電子処方箋、電子カルテ、保険償還、患者の教育などの目的で広く利用されている。
貴社の製造施設で製造される全ての医薬品が、FD&C Act 510、21 U.S.C.360、21 CFR Part 207に基づく全ての
施設登録及び医薬品登録要件と、その他全てのFDA規制要件に準拠していることを保証するのは、貴社の責任で
ある。登録及び登録情報、施設の適切な登録方法または医薬品登録情報の提出方法については、Electronic Drug
Registration and Listing Instructionsを見よ。
●結論
前述の通り、貴社には、これらの違反の再発やその他の違反が発生しないように、逸脱を調査して根本原因を特定し
今後の継続的なコンプライアンスを保証するために是正及び予防処置を実施する責任がある。
FDAは、貴社から米国に輸入のために提供される全ての医薬品及び医薬品製品に対し、2026年7月21日に輸入警告
措置66-40を発した。
全ての違反に完全に対応され、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての
新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを
確認するために再査察を行うかもしれない。
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今回は、中国の企業に対するリモート評価で確認された事項に関するウォーニングレターでした。
開発段階でプロセスバリデーションが完了していないという原薬を、製造指図書の原本を制定しない状態で製造して
輸出してしまうというのは、なかなかの話だと感心してしまいました。
結局輸入警告措置はとられましたが、このような原薬でも米国向けに販売ができてしまう状況は、米国がいかに中国
の原薬に依存しているかを示しているようにも感じられました。

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