FDA:米国に製造所のあるドイツの製薬会社に対する指摘 (WL:320-26-119)

今回は、米国食品医薬品局(FDA) が米国内に製造所を持つドイツの製薬会社に対して発したウォーニングレターを
取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/fresenius-medical-care-ag-co-kgaa-730319-08252026

********************* Warning Letter 320-26-119 概要 ********************
2026年3月2日~3月6日のFDAによる米国ユタ州にある医薬品製造所(本社:ドイツ)の査察において、医薬品製造に
関するCGMP違反がみつかり、2026年8月25日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、ロットがすでに出荷されたかどうかに関わらず、ロットまたはその成分が規格を満たしていない、または説明
のつかない矛盾や不具合を徹底的に調査することを怠った。(21 CFR 211.192)
<指摘1詳細>
貴社は、貴社が製造する大容量非経口(LVP)のバッグに関する顧客からの苦情を適切に調査することを怠った。貴社
の調査は不十分で、製品の品質へのリスクを適切に評価していなかった。また貴社は、是正処置・予防処置(CAPA)を
決定して、適切かつ適時に実施することを怠った。
具体的には、2025年8月に貴社は、腹膜透析液XXのバッグの漏れに関する苦情が続いたことにより、調査を開始
した。この調査で、貴社は最終的に複数のロットから約156個のバッグに関する35件の苦情を受けたことが判明した。
貴社の調査は、バッグの漏れは“印刷による穴”が原因であると結論づけた。
貴社のリスクマネジメントのマトリクスは、腹膜炎を潜在的危害として示し、最も高い重大度のレベルが推奨されて
いたにも関わらず、貴社は “物的損害”を潜在的な被害として、最も低い重大度のレベルを割り当てた。我々の査察の
後の2026年4月に、貴社は最終的に回収を実施したが、貴社は2025年8月の結果に従い、回収を実施しないことを
選択した。
これらの決定についての貴社の正当化の理由は以下のことを含んでいた:腹膜炎の症例が報告されていないこと、
製品ラベルに使用者に対しバッグの漏れを確認するよう指示が記載されていること、漏れは治療前に容易に発見
できるはずであること、そして漏れた液体は外装に溜まるはずであること。
特筆すべきは、我々の査察の後、貴社が1ロットの一部を調べ、“外装には実際には液体がないにも関わらず、一次
容器に穴がみつかった”と述べていて、使用者が漏れを常に発見できると想定していた貴社の誤りを示している。
さらに、市販製品のバッグに漏れる傾向を知った時点で、問題を阻止するために緊急性を高めるべきであった。
貴社の当時のこれらのロットを回収しないという決定は、腹膜透析(PD)患者を非滅菌の可能性のある医薬品に
曝した。非滅菌の腹膜透析液の使用は、腹膜炎を発症するリスクを高め、その臨床的影響には重篤で生命を脅かす
可能性のある合併症を含む場合がある。さらに、この医薬品の中の主要成分であるブドウ糖は汚染微生物の栄養源
となり、増殖を促進する可能性がある。
貴社は回答の中で、リスクマネジメントは腹膜炎のリスクに基づくべきであったことと、使用者は漏出しているものを
発見できると想定すべきでなかったことを認めている。貴社はこのインシデントのリスクの再評価を行い、影響のある
ロットの回収を決定した。また貴社は、リスクアセスメントにおいて、既知及び潜在的な危害が確実に評価されるよう
手順を改訂した。
貴社の回答は不十分である。貴社の回答は、漏出しているものを出荷・販売することを防ぐための製造中の検知の
向上を含む十分なCAPAを含んでいない。貴社の施設で製造されたLVPバッグの漏出に関する過去3年間の多数の
苦情、フィールドアラートレポート、回収されたロットを考えると、これは非常に懸念される。注目すべきは、貴社が過去
に提出した2件のフィールドアラートレポートは、微生物汚染を伴うLVPバッグに関するものだった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・これに限定されないが、以下のことを含む、バッグの漏れの根本原因に関する包括的で独立したアセスメント
 〇貴社で使用されている印刷技術の欠陥、装置や職員によるバッグの取り扱いに関連するその他の潜在的な原因
に対処する、バッグの漏れの潜在的な原因に関する故障モード影響分析
 〇袋の漏れの原因となる可能性を含めた、貴社の印刷制御とその機能に関する独立したレビュ
 〇バッグの漏れの原因となる印刷工程を最小限にできる、または、排除できる代替の印刷技術の分析
 〇現在の印刷技術の交換など、特定されたバッグの漏れの根本原因に対処するためのCAPA
・貴社の品質部門(QU)が効果的に機能するために権限とリソースが与えられていることを保証するための包括的な
アセスメントと改善の計画
 アセスメントには、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
 〇貴社で使用されている手順が安定していて適切かどうかの判断
 〇適切な手順の遵守を評価するための、貴社の作業全体のQUの監督に関する規定
 〇QUがロットの処遇を判断する前の、各ロットとそれに関連する情報の完全で最終的なレビュ
 〇全ての製品の同一性、濃度、品質、純度を保証するための、調査及びその他全てのQUの職務遂行の監督と承認
・逸脱、不一致、苦情、Out-of-Specifications(OOS)の結果、不具合の調査に関する貴社のシステム全体の包括的で
独立したアセスメント
 このシステムを修正するための詳細なアクションプランを提出せよ。貴社のアクションプランには、これに限定され
ないが、調査能力、調査範囲の決定、根本原因の評価、CAPAの有効性、品質部門による監督、文書化された手順の
大幅な改善を含める必要がある。調査の全ての段階が適切に実施されることを貴社がいかに保証するかについても
説明せよ。
・これに限定されないが、漏れを含む、メジャー及びクリティカルな不具合に関する工程内の基準の独立したレビュ
 以下のことを含む回顧的な評価を実施せよ。
 〇全ての不具合の数と種類のリスト
 〇漏れのインシデントが繰り返し発生した期間を対象とした、ロットの性能に関する詳細な長期(少なくとも5年)の
サマリ
 〇異常に高い欠陥率だった全てのロットと、それらの逸脱の潜在的な根本原因
・貴社の製造工程の包括的な工程性能のアセスメントを実施せよ。これに限定されないが、特に、バッグの漏れの検出
を含む、重要な操作ステップの能力と、能力のアセスメントに基づいて開始される全ての関連するCAPAに重点を
おくこと。また、バッグの完全性を損なう可能性のある作業者の取り扱い手順や機械への負荷のアセスメントも
含めよ。
・管理状態を慎重に監視するために処理ラインの性能の継続的で統計的なアセスメントを行うための改善プログラム
を提出せよ。具体的には、ロット内及びロット間のばらつきをモニタし、工程管理のずれを迅速に検出するために、
貴社で製造する医薬品の各ロットの統計的な工程管理のプログラムを含めよ。
・貴社の医薬品のバッグを成型、充填、密封する装置に関する適格性評価レポート、バリデーションレポート、保守
プログラムの独立したレビュの手順とその後の報告を提出せよ。また、工程全体を通して、バッグの漏れを検知する
ために使用されている方法、モニタリングの頻度、各方法のバリデーションレポートの独立したレビュの結果も提出
せよ。
・製品のライフサイクル全体を通して管理状態を保証するための貴社のバリデーションプログラムの詳細なサマリと、
関連する手順を提出せよ。継続的な管理状態を保証するための、工程性能適格性評価と、ロット内及びロット間の
ばらつきのを継続的で慎重なモニタリングに関する貴社のプログラムについて説明せよ。また、貴社の装置と施設に
関する適格性評価プログラムについても説明せよ。
●指摘2
貴社は、貴社が製造する医薬品が、それが持つとうたわれた、まはた、表示された同一性、濃度、品質、純度を持つこと
を保証するために設計された適切な文書化された製造手順と工程管理を確立することを怠った。
(21 CFR 211.100(a))
<指摘2詳細>
貴社の目視検査プログラムは、滅菌注射剤に目に見える微粒子が実質的に含まれていないことを保証するのに
不十分だった。具体的には、貴社は注射剤の目視検査を行う職員の資格を適切に評価することを怠った。貴社の目視
検査の適格性評価セットは、適切なサイズの目に見える代表的な微粒子が含まれておらず、また、貴社の資格の
適格性評価の記録は、XXバッグの目視検査を実施する職員の適格性を判断するための十分に詳細な情報が不足
していた。
貴社の回答は、貴社の目視検査の適格性評価セットは、代表的な微粒子が含まれていると述べている。貴社は、
それらの微粒子を引き続き含む新しいセットを開発中で、セットが引き続き微粒子の代表正性を維持していることを
確認するために定期的に製造及び市販後データをレビュするする予定だと付け加えている。
貴社の回答は不十分である。目視検査を行う職員が適切な基準を満たすレベルで目視可能な微粒子を検出できる
ことを示すための目視検査適格性評価プログラムの不備に対処していない。貴社のセットに含まれるサンプルの
微粒子は、貴社の医薬品内のより小さい微粒子を代表していない可能性がある。
目視での微粒子の検出は、とりわけ、適切に鋭敏な視力を持つ訓練を受けた職員により再現性よく検出できることを
保証することに依存する、確率的なプロセスである。貴社の適格性評価セットは、貴社の医薬品に存在する可能性の
ある微粒子のサイズの範囲全体にわたって検査者に適切な課題を与えることのできるサイズと構成の微粒子を含む
べきであり、また、検査者が貴社の特定の製品や容器・蓋の密閉システムに関連した目視可能な微粒子を確実に検知
できることを示すために適格性評価が実施されているべきである。これらの適格性評価セットは、検査者の検知能力
を適切に試すために、通常、100~150ミクロンの範囲の粒子が含まれている必要がある。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・全ての医薬品の製造ライフサイクル全体を通して継続的な管理監督をより確実に保証するための改善計画
 工程のばらつきの原因を特定し、製造作業が適切なパラメータと品質基準を満たす、よりデータに基づいた科学的
に理にかなったプログラムを提供せよ。プログラムは、これに限定されないが、装置の意図した使用目的への適合性の
評価、投入原材料の品質の保証、各製造工程のステップとその管理の能力と信頼性の判断、工程性能と製品品質の
慎重で継続的なモニタリングが含まれる。
・CGMPの遵守を保証するための、貴社の目視検査プログラムに関する包括的で独立したアセスメントと改善計画
 改善計画には、これに限定されないが、以下のことを含むべきである:
 〇必要に応じて、目視検査方法の改善
 〇目視検査を実施する全ての職員に関する適格性評価の手順と関連する記録の改善
 〇米国薬局方(USP)<790>“注射剤の中の目視可能な微粒子”の基準の貴社手順への組み込み
 〇職員の適格性評価試験の一環として、約100~150ミクロンの粒子も含んだ、適切な範囲の目視可能な種類と
  サイズの微粒子の使用
 〇目視可能な微粒子の検査者の適切な適格性評価を確実にするために必要なその他全ての規定
●医薬品の回収
2026年4月6日、滅菌保証の欠如により、貴社はXX腹膜透析液の自主回収を発表した。
●CGMPコンサルタント
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社は、貴社の作業を評価し、貴社のCGMPの要件を満たすのを
助けるために21 CFR 211.34に記載された適格性のあるコンサルタントを雇うべきである。適格性のあるコンサル
タントは、貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成しようとする前に、貴社の全ての作業を対象
に、CGMP遵守に関する6つのシステム(※)の包括的な監査も実施し、是正処置・予防処置の完了と効果を評価する
必要がある。
※6つのシステム:品質システム、設備&装置システム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、
試験管理システム
●結論
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、調査して違反の原因を
判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
貴社の施設で製造される医薬品の供給に支障をきたす可能性のある措置を検討している場合、FDAが貴社の作業を
法令遵守に導くための最も効果的な方法を貴社と共に行えるようCDERの医薬品供給不足担当に直ちに連絡せよ。
医薬品供給不足担当への連絡は、貴社が21 U.S.C. 356C(b)に基づき、医薬品の製造の中止または中断を報告する
義務を果たすためにも役立つ。またこれは、医薬品の不足を回避し、貴社製品に依存している患者の健康を守るため
に、もしあれば、どのような措置が必要かをFDAが可能な限り速やかに検討することができる。
全ての違反を速やかに是正せよ。この問題に即座かつ適切に対処しない場合、これに限定されないが、差し押さえや
差止命令など、予告なく規制措置または法的措置が取られる可能性がある。違反が未解決の場合、他の連邦機関との
契約を締結できなくなる可能性もある。
違反に対処しない場合、FDAは輸出証明書の発行を保留する可能性もある。全ての違反に完全に対応がなされ、我々
が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の医薬品製造業者としての新しい申請やリストの補完の承認を
保留するかもしれない。我々は、貴社が全ての違反に対する是正処置を完了したことを確認するために再査察を行う
かもしれない。
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今回は、米国内に製造所を持つドイツの製薬会社に対するウォーニングレターでした。
注意書きに穴が開いているかチェックするようにと書いてあるから大丈夫、穴が開いているのは見ればわかるから
大丈夫という理由で、リスクは低いと評価したり苦情を軽視したりするのは、製造業者がしがちな判断かもしれないと
思いました。
故障モード影響分析の手順があっても、判断を間違えれば正しい分析ができないということを改めて感じました。

株式会社デジタルシナジー 
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