今回は、米国食品医薬品局(FDA) が日本の製薬会社に対して発したウォーニングレターを取り上げます。
注:文中のXXはウォーニングレターでマスキングされている文言及び具体的な社名・品名等です。
出典: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/sato-pharmaceutical-co-ltd-723059-05182026
************************* Warning Letter 320-26-75 概要 *************************
2025年11月13日~11月21日のFDAによる日本の医薬品製造所の査察において、医薬品の製造に関するCGMP違反がみつかり、
2026年5月18日付でウォーニングレターが発行されました。
●指摘1
貴社は、無菌をうたう医薬品の微生物学的汚染を防ぐために設計された適切に文書化された手順を制定してそれに従うことを怠り、
また全ての無菌工程のバリデーションも怠った。(21 CFR 211.113(b))
<指摘1詳細>
OTC医薬品XXのXXの無菌充填に使用されているISO5エリアは、その用途に根本的に不適当である。貴社の無菌充填ラインXXの
設計と性能は、管理状態を確立して維持するのに十分ではなかった。
2022年11月から2025年2月の間に貴社が実施した無菌充填ラインのバリデーションにおいて、少なくとも6回、培地充填で不具合
が発生した。特に、このラインでは重大な微生物汚染と異物粒子汚染が発見された。貴社が実施した是正処置は、再現性と継続的
な汚染防止を保証するために不可欠な無菌工程の設計の根本的な要因を是正するには不十分であると思われる。このラインは、
XXとXXを含む米国市場向けの医薬品XXの製造に使用されている。
貴社のISO5エリアの設計は、XX介入時に無菌処理ラインの一方向流の保護を保証していない。グレードA層流(RABS XX)の
吸気口は、充填ラインXXのXXレベル付近のRABS XXに配置されている。XX介入時、空気が無菌充填ラインから上方に吸い上げ
られる。この根本的な設計上の欠陥により、初回通過空気が充填ラインに到達せず、無菌医薬品が曝露されている間、重要なISO5
ゾーンが保護されていない。
充填ラインXXで貴社が実施した気流可視化試験は、一方向流が十分に実証されておらず、以下の点で不十分だった:
・貴社の気流可視化ビデオには、煙源の急速なマニュアルの移動の様子が映っていた。
・煙源の位置により、作業エリア全体の高さにおける気流の評価が出来ていなかった。時折、技術者が体で気流の視界を遮っていた。
貴社の回答は不十分である。2026年10月に培地充填試験を実施する前にラインを更新し、XXの培地充填試験が成功した後に
商業生産を再開する計画を示しているが、貴社の是正処置は無菌処理作業における根本的な設計上の欠陥に対処するには不十分
である。
貴社はボトルホルダーをXXホルダーに交換し、スモークスタディの手順を改訂することを約束しているが、無菌処理の設計、環境
管理、汚染防止のシステム上の広範囲な不備について対処していない。
これらのシステム上の問題は、貴社の製品XXを使用する患者に容認できないリスクをもたらす。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・これに限らないが以下のことを含む、貴社の無菌工程、装置、施設に関する全ての汚染の危険の包括的で独立したリスクアセス
メント
〇ISO5エリア内のすべての人間同士の相互作用
〇無菌処理室及び関連クリーンエリア内の更衣
〇装置の配置と人間工学
〇ISO5エリアとその周辺の部屋の空気の品質
〇施設レイアウト
〇(無菌作業の実施とサポートに使用される全ての部屋全体の)職員の流れと原材料の流れ
・汚染の危険のリスクアセスメントの結果に対処するためのタイムラインを含む詳細な改善計画
貴社の施設の無菌処理操作の設計と管理に関して行われる具体的な改善について記述し、この是正処置・予防処置(CAPA)の
計画がいかに貴社の不備のある無菌製造作業を効果的に改善するかを説明せよ。貴社の無菌処理ラインとクリーンルームの
両方の設計に対する包括的な変更も含めよ。また、大幅に改善される貴社の操作の適格性評価とバリデーションの計画について
も述べよ。
●指摘2
貴社は、医薬品の各ロットについて、好ましくない微生物がいないことが求められる医薬品の各ロットについて、適切なラボの試験
を実施することを怠った。また貴社は、医薬品の安定性を評価し適切な保管条件と使用期限を決定するために設計され適切に
文書化された試験プログラムを制定し、それに従うことを怠った。(21 CFR 211.165(b) & 21 CFR 211.166(a))
<指摘2詳細>
貴社は、ラベルに記載された使用期間全体にわたって貴社の医薬品の化学的および微生物学的特性が制定された規格を満たし
許容範囲内であることを証明する適切な安定性プログラムを持っていなかった。
貴社は、貴社が米国市場向けに販売しているOTC医薬品について、安定性を示す方法を制定していなかった。複数の医薬品の
安定性データをレビュする中で、貴社の高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析では試験中に検出された不純物のピークのモニタ
リングや評価を行っていないことが判明した。これらの不純物のピークはクロマトグラム上で確認できたが、制定された許容基準
に関する特定または適切な評価がされていなかった。例えば:
・XXのロット番号XXの12ヶ月及び24ヶ月の安定性データは、XXピークよりも前に溶出するピークが認められた。このピークは
リリース試験では検出されなかった。貴社によると、このピークは分解生成物の不純物であるとのことだが、現在のところ、安定性
試験においてモニタも報告もされていない。
・XXのロット番号XXの12ヶ月の安定性データは、XXピークよりも前に溶出するピークが複数認められた。これらのピークは
リリース試験では検出されなかった。貴社は、これらの分解生成物の不純物を特定していない。
リリース試験で検出されず安定性試験中に検出された異質のピークの出現は、製品の劣化、容器-蓋の相互作用、または医薬品
の安全性と有効性に影響を与える可能性のあるその他の不純物の可能性を示す。医薬品の使用期間を通じた不純物のモニタ、
特定、管理の不履行は、許容可能な安全性、同一性、濃度、純度、及び品質を保持することを保証する能力を損なう。
貴社の安定性試験プログラムは、製品の安定性の特性を適切に評価するために必要な全ての試験項目を含んでいなかった。
安定性プロトコルと試験記録のレビュで、貴社が所定の安定性試験から重要な品質特性を省略していることが明らかになった。
例えば:
・XX、XXの使用期限に関する貴社の安定性試験プログラムには、粘度、分解生成物、XXの含有量、および製剤均一性の試験
が含まれていない。
・XX、XXの使用期限に関する貴社の安定性試験プログラムには、XX製剤に関して不可欠なパラメータであるXXの含有量の
試験(XX試験)、分解生成物、粒子状物質、重量減少の試験が含まれていない。
貴社の回答は不十分である。貴社は安定性試験のクロマトグラムの回顧的な調査を実施する予定であり、全てのクロマトグラフ
のピークの積分とモニタリングを義務付ける新しい手順を制定するつもりであると述べている。しかし貴社は、貴社のOTC医薬品
の安定性を示す方法、分解生成物の包括的な同定、または適切な安定性を示す方法なしに出荷され現在米国市場にある製品の
健康被害評価に関する情報を提供していない。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・貴社の安定性プログラムの適切性を保証するための包括的で独立したアセスメントとCAPAの計画
貴社の改善されたプログラムには、これに限らないが、以下の事を含む必要がある:
〇安定性を示す方法
〇出荷許可前の、販売される密閉容器内の各医薬品の安定性の検証
〇うたわれている使用期限が妥当かどうか判断するための、各製品の代表的なロットが毎年安定性プログラムに追加される
ような継続的なプログラム
〇各ステーション(タイムポイント)で試験される特定の属性の詳細な定義
〇貴社の改善された安定性プログラムのこれら及びその他の要素を述べた全ての手順
●指摘3
貴社は、貴社のOTC医薬品XXが同一性、濃度、品質、純度の適切な標準に準拠していることを保証するために設計された、
科学的に理にかなって適切な規格、標準、サンプリング計画、試験手順を含む試験の管理を確立することを怠った。(21 CFR
211.160(b))
<指摘3詳細>
XXは、不活性成分としてXXを含むXXなどのOTC医薬品XXを製造している。貴社は、セパシア菌群の試験を含む、必要な
微生物学的試験を実施せずに米国市場向けに複数のOTC医薬品を製造・販売した。製品は、これに限らないが以下のもの
を含む:
〇XX
セパシア菌群は、免疫システムが弱っている患者や慢性肺疾患の患者にとって特に懸念される日和見病原菌である。
貴社の回答は不十分である。貴社は、参考サンプルのセパシア菌群試験を実施し、該当する手順を改訂すると表明している
が、保存品サンプルの試験結果、必要な微生物学的試験を実施せずにリリースされたロットの健康被害評価、患者のリスク
のアセスメント、市場でのアクションの必要性に関する評価が提供されていない。また貴社は、貴社のXXシステムの適切性
を示すために、これらの製品がリリース時と安定性試験時にXX試験に合格したエビデンスも提供していない。さらに貴社
は、貴社の医薬品に使用されているXXがXXの要件を満たしていることを示すエビデンスも提供しなかった。
この文書への回答の中で、以下の情報を提供せよ:
・ロットの処遇を判断する前に、貴社の医薬品の各ロットを分析するために使用される試験方法を含む化学及び微生物学
的規格のリスト
〇この文書の日付時点で使用期限内の米国向けに販売された医薬品の全ロットの品質を判断するための保存品サンプル
の化学及び微生物学的試験(不純物を含む)実施のアクションプランとスケジュール
〇各ロットの保管サンプルの試験から得られた全ての結果のサマリ
それらの試験で基準を満たさない品質の医薬品が明らかになった場合、顧客への通知や製品の回収など、迅速な是正
処置を講じること。
・XXを含むOTC医薬品XXについて:
〇各医薬品が、リリースまたは安定性試験のどちらか低いほうの許容される最低レベルXXで、XX試験の要件を満たして
いるかどうかを示す試験データ及び試験結果
〇リリース時及び製品安定性プログラムにおける、XX含有量に関する試験結果
●無菌医薬品製造の一時停止
我々は、貴社が、是正処置の実施と培地充填試験の完了まで、米国向けの製造を一時停止したことを認識している。貴社
の無菌製造ラインで記録された根本的な欠陥を考えると、是正処置が実施され、貴社が当オフィスと貴社のCAPA計画を
協議するまで、製造を再開しないことを約束せよ。あるいは、米国市場向けの無菌医薬品の製造を今後一切計画しない
のであれば、この文書への回答として、その旨を文書で約束せよ。
●CGMPコンサルタントの推奨
我々が貴社で確認した違反の性質に基づき、貴社が米国市場向け医薬品の製造を再開するつもりであれば、貴社は、貴社
の作業を評価し、CGMPの要件を満たすよう貴社を助けるために21 CFR 211.34に記載された適格性のあるコンサル
タントを雇うべきである。適格性のあるコンサルタントは、貴社がFDAと共に貴社のコンプライアンス状態の解決を達成
しようとする前に、CGMP遵守に関して貴社の全ての作業を対象に6つのシステム(※)の包括的な監査も実施し、是正処置・
予防処置の完了と効果を評価する必要がある。
貴社のコンサルタントの使用は、CGMPを遵守するための貴社の義務を軽減するものではない。貴社の経営陣には、継続
的にCGMP遵守を保証するために、全ての不備とシステムの欠陥を解決する責任が残る。
※6つのシステム:品質システム、設備&装置システム、原材料システム、製造システム、包装&ラベル貼付システム、試験
管理システム
●結論(一部省略)
この文書で挙げた違反は、貴社の施設に存在する違反の包括的なリストではない。貴社には、全ての違反を調査して原因を
判断し、再発やその他の違反の発生を防止する責任がある。
全ての違反を速やかに是正せよ。全ての違反に完全に対応がされ、我々が貴社のCGMPの遵守を確認するまで、FDAは貴社の
医薬品製造業者としての新薬の申請やリストの補完の承認を保留するだろう。また、我々は、貴社が全ての違反に対する是正
処置を完了したことを確認するために再査察を行うかもしれない。
違反に対処しない場合、FDAは貴社のXXで製造された製品の米国への輸入を拒否する可能性がある。
*************************************************************************
日本の製薬会社に対する久々のウォーニングレターでした。
指摘1は、単なる手順逸脱の指摘ではなく、無菌充填ラインの設計や管理が根本的に不適当である(fundamentally unsuitable)
と強い表現をしている点が印象的でした。
昨今のFDA査察は、EU GMP Annex1の改訂と連動し、汚染管理を重視しているように感じます。
また、近年スモークスタディの要求レベルが上がる傾向にあると言われていますが、今回の気流可視化ビデオの撮り方に対する指摘は、
まさにその傾向を示していると感じました。
今回のウォーニングレターは、運用改善だけではなく設計に対する指摘が含まれており、費用も時間もかかる非常にインパクトのある
指摘でした。しかし、これは決して珍しいケースではないかもしれません。日本には設備の老朽化しつつある製薬会社が多いので、
汚染管理の強化と相まって、今後も同様の指摘が発生するかもしれません。
